実家じまいとは?進め方の全手順と費用相場を順番どおりに解説

進め方ガイド

実家じまいは、やることを分解すると「①決める(相続・家族の合意)→②分ける(残す物の仕分け)→③手放す(売る・譲る・処分する・供養する)→④締める(清掃と家の引き継ぎ)」の4段階に整理できます。最初の一歩は片付けではなく、「その家を片付けてよい立場に自分がいるか」の確認です。ここを飛ばさなければ、特別な知識がなくても進められます。

この記事では、実家じまいの全体像を8つの手順に分けて、状況別(親が存命・亡くなった後・相続放棄を検討中)の進め方、費用の内訳と目安、関係する期限までを順番に解説します。「何から手を付ければいいのか分からない」段階の方が、読み終わったときに自分の最初の一歩を決められることを目指して書きました。

実家じまいの4段階(決める・分ける・手放す・締める)の流れ図

実家じまいとは?

夕方の光が入る、片付け前の静かな実家の居間

実家じまいとは、親が住まなくなった実家を片付けて、家そのものの行き先(売却・賃貸・解体・管理)まで決めることをいいます。親が亡くなった後に限らず、施設への入居や子との同居をきっかけに、親が元気なうちに親子で進める家庭も増えています。

似た言葉に「家じまい」があります。意味はほぼ同じで、自分の家を対象にするときは家じまい、親の家を対象にするときは実家じまいと呼び分けられることが多い、という程度の違いです。

背景にあるのは空き家の増加です。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の空き家は約900万戸、住宅全体の13.8%で過去最多を更新しました(出典:総務省統計局 住宅・土地統計調査)。誰も住まない実家には固定資産税と管理の負担が続き、老朽化が進むほど売却も解体も難しくなっていきます。放置の先に良い選択肢が増えることは、残念ながらほとんどありません。

始める前に確認したい3つのこと

通帳・印鑑・保険や登記の書類をまとめた机

片付け作業に入る前に、確認しないと後戻りできなくなる項目が3つあります。ここだけは順番を飛ばさないでください。

1. 相続の状況と所有権

最初に確認するのは、家と家財の所有者が誰かです。名義が親のままで親が存命なら、処分の判断は所有者である親の意思が基本になります。親が亡くなっている場合は、相続人が誰かを確定し、遺言の有無を確認してからでないと、家財ひとつ捨てるのにもリスクが伴います。

特に注意したいのが、相続放棄を検討している場合です。放棄の手続きが済む前に遺品を処分・売却すると、相続を承認した(単純承認)とみなされ、放棄が認められなくなるおそれがあります。借金などマイナスの財産が心配な状況では、片付けの手を止めて、先に弁護士や司法書士へ相談してください。形見分け程度でも扱いが問題になった例があるため、「価値のある物には触れない」が安全側の行動です。

2. 家族・親族の合意

実家じまいのもめごとで多いのは、費用や作業の負担より「勝手に捨てた・捨てられた」という感情のこじれです。着手前に、兄弟姉妹など関係者へ「いつ・どこまで・誰がやるか」を共有し、形見分けの希望を聞いておきます。事前のひと言で防げるトラブルがかなりの割合を占めます。

3. 関係する期限

実家じまいには、法律上の期限がいくつか関わります。主なものを一覧にしました。

手続き 期限 備考
相続放棄 相続を知ってから3ヶ月以内 期限前に遺品を処分しない
相続税の申告 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 該当する場合のみ
相続登記 取得を知った日から3年以内 2024年4月から義務化

期限が決まっている事情があるなら、そこから逆算して「自分でやる範囲」と「業者に任せる範囲」を先に切り分けておくと、途中で息切れしません。

状況別の進め方:存命中・死亡後・相続放棄を検討中

家族で衣類を箱に仕分けする手元

実家じまいは、家の状況によって最初にやることが変わります。自分がどれに当てはまるかを確認してください。

親が存命のうちに進める場合

いちばん進めやすい形です。残す物を親自身が選べるため、家族が判断に迷う場面が大きく減ります。進め方のコツは「実家じまい」と大きく構えないこと。貴重品と重要書類の置き場所を親子で確認する、使っていない部屋をひとつ片付ける、といった小さな区切りから始めると、親の抵抗感が少なくて済みます。家の名義・遺言・介護の希望など、聞きにくい話題はこのタイミングでしか聞けないことも多く、片付けと同じくらい大切な作業です。

親が亡くなった後に進める場合

相続人の確定と遺言の確認が先、片付けはその後です。相続税の申告が必要なケースでは、家財よりも預貯金・不動産・保険の把握を優先します。気持ちの整理がつかないうちに急いで片付ける必要はありませんが、空き家として放置する期間が長引くなら、電気・水道・火災保険の扱いと、通気や郵便物の管理だけは早めに決めておきましょう。

相続放棄を検討している場合

片付けを始めてはいけない段階です。前述のとおり、財産の処分は単純承認とみなされるおそれがあります。期限は相続を知ってから3ヶ月。迷っている時間はあまりないため、まず専門家に相談して方針を決め、放棄しないと決まってから実家じまいに着手してください。

実家じまいの全手順8ステップ

仕分け用の段ボールが並ぶ実家の部屋

全体の流れを一覧にしました。基本は上から順ですが、家を売る予定なら不動産会社への相談(手順8の一部)を早めに始めてもかまいません。家財が残った状態でも査定はできます。

手順 やること 目安期間
1 現状把握と方針決め 1〜2週間
2 貴重品・重要書類の確保 1〜2日
3 残す物の仕分け 2週間〜2ヶ月
4 売る・譲る(買取・寄付) 1〜2週間
5 家財の処分 数日〜2週間
6 捨てにくい物の供養 1〜2週間
7 清掃 1〜3日
8 家の行き先へ引き継ぎ 案件による

手順1:現状把握と方針決め

家全体を見て回り、部屋ごとに写真を撮ります。物量の見積もり、業者への相談、家族への共有、すべてこの写真が土台になります。あわせて「家を最終的にどうするか(売る・貸す・壊す・管理する)」の仮方針を決めます。仮でかまいません。方針があると、残す物と手放す物の判断基準がぶれなくなります。

手順2:貴重品・重要書類の確保

片付けの前に、探す物を先に確保します。権利証(登記識別情報)、通帳・印鑑、保険証券、年金関係の書類、契約書、現金、貴金属。この段階では捨てる判断を一切しません。段ボール1〜2箱に「重要」と書いてまとめ、自宅へ持ち帰ります。

手順3:残す物の仕分け

仕分けは「残す」「手放す」「保留」の3択にします。迷った物はすべて保留箱へ入れ、判断を後回しにします。1つずつ悩むと1部屋に1週間かかることも珍しくありません。保留箱は最後にもう一度だけ開き、それでも迷う物は写真に残してから手放すと、後悔がずいぶん軽くなります。

手順4:売る・譲る

状態のよい家具・家電・貴金属・着物・骨董品は、処分の前に買取を検討します。出張買取なら運び出しも業者側が行うため、労力の節約にもなります。高値を狙うというより、「お金になりながら処分量が減る」ことに価値があります。

手順5:家財の処分

残った家財の処分ルートは1つではありません。組み合わせて使います。

  • 自治体の粗大ごみ収集・処理施設への持ち込み:費用がいちばん安い方法です。そのかわり分別・運び出し・搬入は自分で行います
  • 市区町村の許可を受けた(または委託された)業者への依頼:家庭のごみ・家財の収集運搬には、市区町村ごとの一般廃棄物処理業の許可か、市区町村からの委託が必要です。依頼先がその市町村で収集できる立場かを確認してから頼みます
  • テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン:家電リサイクル法の対象です。買い替え店や購入店での引き取り、自治体案内の方法で処分します
  • 親族・知人への譲渡:使える家具家電は、譲り先が見つかれば費用ゼロで減らせます

自分でやるか業者に任せるかは、物量・実家までの距離・使える時間で決めます。判断の目安として、軽トラック1台に収まらない物量になってきたら、業者依頼の見積もりを取り始める価値があります。

手順6:捨てにくい物の供養

仏壇・位牌・遺影・人形・写真アルバムは、ごみ袋に入れることに抵抗を感じる方が多い品物です。無理に「ただの物」と割り切る必要はありません。仏壇の閉眼供養(魂抜き)や、郵送で受け付けるお焚き上げサービスなど、気持ちの区切りをつけながら手放す方法があります。品目ごとの具体的な手順は捨てにくいモノの始末のカテゴリで個別に解説しています。

手順7:清掃

家財が出た後、掃き掃除と拭き掃除をします。売却予定なら完璧にする必要はなく、内覧に支障がない程度で足ります。長年の汚れが強い場合や、においなど特殊な事情がある場合に清掃業者を検討します。

手順8:家の行き先へ引き継ぎ

空になった家を、方針に沿って買主・借主・解体業者などへ引き継ぎます。ここから先は不動産と登記の領域です。相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく3年を過ぎると過料の対象になり得ます。名義が親のままなら、司法書士への相談を早めに済ませておくと後の手続きが滞りません。

実家じまいの費用:内訳と目安

家計簿と電卓で片付け費用を計算する手元

実家じまいの費用は「家財の片付け」だけでは終わりません。全体の内訳を先に見てください。

費用項目 目安 発生する場合
家財の片付け・処分 3万〜60万円程度 ほぼ全ケース
仏壇の供養・処分 数千円〜10万円程度 仏壇がある場合
清掃(業者依頼時) 数万円〜 汚れが強い場合
解体 規模・構造・立地で大きく変動(要見積もり) 更地にする場合
測量・登記など 数万〜数十万円 売却・相続登記時
交通費・宿泊費 回数×実費 遠方の場合

このうち家財の片付けを業者に依頼した場合の目安は、間取りと物量でおおむね次の範囲です。

間取り 費用の目安
1K〜1DK 3万〜10万円
2DK〜2LDK 9万〜25万円
3LDK〜4LDK 17万〜50万円
一軒家まるごと 20万〜60万円以上

※片付け業者各社が公表している料金プランをもとにした目安です。地域、物量、搬出条件(階段・道路事情)、料金に含まれる作業範囲(分別・清掃・供養など)で変わるため、正確な金額は複数社の見積もりで確認してください。

間取り別の家財片付け費用の目安を示した棒グラフ

金額をいちばん左右するのは間取りより物の量です。手順3〜4で物量を減らしてから見積もりを取ると、それだけで総額が数万円単位で変わることがあります。

費用を抑える方法と補助金の調べ方

玄関にまとめた紙類と処分品の束

詳しくは費用とお金のカテゴリで扱いますが、効きやすいものを3つ挙げます。

  • 自治体ルートの併用:時間に余裕があるなら、粗大ごみ収集や持ち込みで処分量を減らしてから業者に頼むと総額を抑えられます
  • 買取での相殺:家具・家電・貴金属・着物・骨董品は捨てる前に査定へ。買取額を作業費から差し引く業者もあります
  • 自治体の補助金:空き家の家財処分・解体・改修に補助金を設けている市町村があります

補助金を使う場合は、次の3点に注意してください。

  • 申請は契約・着工の前が原則:作業を始めた後・業者と契約した後の申請は対象外になる制度が大半です
  • 対象と条件は自治体ごとに別物:家財処分が対象のもの、解体だけが対象のもの、空き家バンクへの登録が条件のものなど、制度設計はバラバラです
  • 調べ方:「実家のある市町村名+空き家+補助金」で検索するか、市町村の空き家対策窓口に電話で確認します。年度の予算が尽きると受付終了になるため、使うつもりなら早めの確認が確実です

業者に頼む場合:選び方と「許可」の確認

実家の前でトラックへ荷物を運ぶ作業スタッフ

前述のとおり、家庭から出る家財・ごみの収集運搬を行えるのは、市区町村の一般廃棄物処理業の許可を受けた業者か、市区町村から委託を受けた業者です。買取に必要な古物商許可や、事業ごみ向けの産業廃棄物の許可では代わりになりません。ホームページに書かれた許可の種類と対象の市町村を確認し、はっきりしなければ「この市で家庭ごみの収集ができる許可をお持ちですか」と直接聞いてください。まっとうな業者なら即答できます。

「無料回収」を掲げて巡回するトラックや、チラシに所在地のない業者への依頼は、不法投棄や積み込み後の高額請求といったトラブルにつながるおそれがあります。不用品回収サービスをめぐる相談は消費生活センターにも継続的に寄せられています(参考:国民生活センター)。

見積もりは1社で即決せず、作業範囲(分別・搬出・清掃・供養がどこまで含まれるか)と追加料金の条件を書面で確認してから決めます。業者選びの具体的な基準は業者選びのカテゴリで解説しています。

やってはいけない5つの失敗

実家じまいの経験談で繰り返し語られる失敗は、おおむね次の5つに集約されます。

  • 相続の確認前に処分を始める:相続放棄ができなくなる、相続人間の争いになるなど、取り返しのつかない失敗になりやすい項目です
  • 家族に知らせず進める:本人には不要品でも、兄弟姉妹には形見ということがあります
  • 書類・貴重品の確保より先に捨て始める:権利証や保険証券がごみ袋に紛れると、再発行に大変な手間がかかります
  • 短期間で終わらせようと詰め込む:疲れは判断を雑にします。「今日はこの部屋だけ」と区切るほうが、結果として早く終わることが多いものです
  • 思い出の品から手を付ける:アルバムや手紙から始めると手が止まります。思い出の品は最後に回してください

気持ちの整理も、実家じまいの一部です

古い家族写真をそっと手に取る様子

実家じまいには、引っ越しや大掃除とは違う心理的な重さがあります。育った家が空になっていく寂しさや、親の物を捨てることへの罪悪感は、感じて当然のものです。効率だけで進めず、区切りの時間を計画に組み込むことをおすすめします。

具体的には、こんな方法があります。

  • 家の記録を残す:各部屋の写真や動画、間取り図を残しておく。家は無くなっても記録は残せます
  • 最後に家族で集まる日を作る:引き渡し前に一度、家族で実家に集まって食事をする。「ちゃんとお別れをした」という感覚が、後悔をかなり軽くします
  • 思い出の品はデジタル化も選択肢に:全部は残せない写真やアルバムは、スキャンして残す方法があります
  • 親への切り出し方は「片付けよう」ではなく「教えてほしい」から:存命中に進める場合、「家を片付けよう」は反発されがちです。「大事な物がどこにあるか教えてほしい」「この食器の由来を聞かせてほしい」と、親が主役になる聞き方から入ると話が進みやすくなります
  • 家族間の温度差は「期限」で埋める:やる気に差があるときは、感情で説得するより「◯月までに仕分け、◯月に処分」と期限を置いて、各自のペースで関われるようにするほうが現実に進みます

実際に経験した方の声はコラム・体験談で紹介していきます。

実家じまいのよくある質問

Q. 親が元気なうちに始めてもいいのでしょうか?
むしろ理想的です。残す物を親自身が選べるため、後で家族が判断に迷う場面が大きく減ります。貴重品と書類の場所を親子で確認することから始めてみてください。

Q. 遠方に住んでいて、なかなか実家に通えません。
帰省のたびに1部屋ずつ進める、仕分けまで自分でやって処分は業者に任せる、といった組み合わせが現実的です。鍵を預けての作業に対応する業者もありますが、貴重品の確保(手順2)だけは必ず自分の手で済ませてください。

Q. どのくらいの期間がかかりますか?
物量と通える頻度によりますが、週末中心なら数ヶ月、業者に任せる場合の片付け作業自体は1〜3日が目安です。相続税の申告や売却予定など期限がある場合は、そこから逆算して計画を立てます。

Q. 費用は誰が負担するものですか?
法律で決まっているわけではありません。相続人が複数いる場合は、後のもめごとを防ぐため、着手前に全員で分担を合意しておくのが安全です。相続財産から支出したい場合は、遺産分割との関係や税務上の扱いが問題になることがあるため、領収書を残したうえで税理士など専門家に確認することをおすすめします。

Q. 今すぐ実家じまいをしない、という選択はありですか?
ありです。ただし「決めずに放置」と「管理しながら保留」は別物です。保留するなら、通気・郵便物・火災保険・固定資産税の管理を誰がやるかだけは決めておいてください。管理されない空き家は傷みが早く、数年後の選択肢と費用に響きます。

まとめ:確認→確保→仕分け→処分の順で進める

実家じまいが重く感じられるのは、相続・片付け・供養・不動産という別々の問題が、ひとつの家の中に同居しているからです。だからこそ進める順番に意味があります。相続と家族の合意を確認してから、貴重品を確保し、仕分けて、減らしてから手放す。この流れを守るだけで、費用も、家族のもめごとも、後悔も小さくできます。

最初の一歩は、自分の状況の確認です。親が存命なら「大事な物の場所を教えてもらう」こと、亡くなった後なら「相続人と遺言の確認」、相続放棄を迷っているなら「専門家への相談」。それが済んでいる方は、実家の写真を撮って回ることから始めてください。撮り終えたころには、実家じまいは「いつかやること」ではなく、もう進み始めています。

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