土地の境界確定はなぜ必要?費用と進め方の順番

進め方ガイド

実家を売ろうとしたとき、「境界が確定していないと買主が付きません」と言われることがあります。長く住んでいた土地ほど、隣地との境がはっきりしないまま引き継がれているためです。

境界の話には、登記された線としての筆界と、当事者の合意で決まる部分がある所有権の範囲という2つの考え方があります。この2つは一致するとは限らず、食い違うと話がこじれます。

この記事では、境界が問題になる場面、確定の進め方、費用の考え方、話がまとまらないときの制度を整理します。当サイトは土地家屋調査士事務所ではなく、公的資料を確認して実家じまいの実務をまとめているガイドです。個別の判断は土地家屋調査士や弁護士にご相談ください。売却の流れは空き家の売却方法は?仲介と買取の選び方と流れをご覧ください。

境界が問題になる場面

隣家との間に立つブロック塀

境界がはっきりしないままだと困るのは、売るとき、分けるとき、建てるときの3つです。とくに売却では、買主が「隣との境がどこか分からない」状態を嫌います。金融機関が住宅ローンの担保として評価する際にも、境界が確定していることを求められることがあります。実家じまいでは、売り出してから「測量してください」と言われて日程が延びるというのがよくある流れです。売ると決めた時点で、境界の状態を確認しておいてください。

確認する書類と境界標

  • 登記事項証明書:地番、地積、所有者を確認します
  • 公図:土地の形と並びが分かります
  • 地積測量図:作られていれば、境界の記録が残っています
  • 筆界確認書や境界確認書:過去に隣地と取り交わした書面
  • 境界標:現地に杭やプレートが残っているか

地積測量図は法務局で取得できます。古い土地では作られていない、あるいは精度が低いことがあります。分筆や地積の更正をしたときに作られるものなので、代々そのまま引き継がれてきた土地には残っていないことが珍しくありません。

登記事項証明書に書かれた地積が、実際に測ってみた面積と食い違うこともあります。登記の数字は、測量の技術が今ほど高くなかった時代のものが残っているためです。売買では実測の面積で契約するか、登記の面積で契約するかを決めることになります。

現地を歩いて確認する

書類だけでなく、現地で境界標を探してください。コンクリートの杭、金属のプレート、刻まれた十字などが目印です。落ち葉や土に埋もれていることもあります。

見つからない場合は、塀やブロックの位置が境界だと思い込まないことです。塀が境界線からずれた位置に建っている例は珍しくありません。

見つけた境界標は、写真に撮っておいてください。周りの様子と一緒に写しておくと、あとで位置を説明するときに役立ちます。工事や草刈りで抜けてしまうこともあるためです。

筆界と所有権界は別のもの

公図と地積測量図を並べたところ

混乱しやすいのがこの2つです。不動産登記法では、筆界を「表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」と定義しています。つまり、登記されたときに定まった公的な線で、隣同士の話し合いで動かせるものではありません。一方、所有権界(所有権の範囲)は当事者の合意で決まる部分があります。この2つが一致していないことがあるという点が、境界の話をややこしくしています。

筆界と所有権界の違い

筆界 所有権界
決まり方 登記されたときに定まる公的な線 当事者の合意で決まることがあります
動かせるか 話し合いでは動かせません 合意で変えられる場合があります
争いの解決 筆界特定制度、筆界確定訴訟 話し合い、所有権確認訴訟
実家じまいで問題になる場面 分筆、地積の更正 塀の位置、越境、通路の使用

塀が越境しているとき

隣の塀がこちらの土地に入っている、あるいはこちらの塀が越えているという状態は、売買の前に整理しておくべき点です。買主は「引き渡し後に自分がもめる」ことを避けたいと考えます。

すぐに撤去できない場合は、越境の事実と将来の取り扱いを書面で確認するという方法があります。建て替えのときに是正する、といった約束を書面にしておく形です。

(出典)e-Gov法令検索:不動産登記法

確定測量の進め方

測量機器を据えた住宅地

売却で求められるのは、多くの場合隣地の所有者全員と境界を確認した測量図です。土地家屋調査士に依頼し、資料調査、現地測量、隣地との立ち会い、書面の取り交わし、という順で進みます。時間がかかるのは立ち会いの日程調整です。隣地の所有者が遠方にいる、相続で名義が変わっていない、連絡が取れないといった事情があると、数か月かかることもあります。売ると決めたら、早い段階で着手してください。着手が遅れると、買主が決まってから測量待ちで引き渡しが延びることになります。

確定測量の進め方

段階ごとにやること

  1. 土地家屋調査士に相談する:資料と現況を見てもらいます
  2. 資料を調査する:法務局、市区町村、過去の測量図
  3. 現地を測量する:仮の境界点を出します
  4. 隣地の所有者と立ち会う:現地で境界を確認します
  5. 書面を取り交わす:筆界確認書などに署名押印します
  6. 図面を作成する:地積測量図として法務局に備え付けることもあります

立ち会いで気をつけること

立ち会いは、隣の方に現地まで出てきてもらう場面です。当日は境界点を一つずつ指しながら確認していきます。確認できた点は、その場で写真に残しておいてください。

日程は相手の都合に合わせることになります。土地家屋調査士から連絡してもらう前に、自分から一言伝えておくと決まりやすくなります。

隣地の名義が古いままのとき

立ち会いを頼もうとしたら、隣地の名義が何十年も前の方のままだったということがあります。相続登記がされていない土地は珍しくありません。

この場合、現在の相続人を探して立ち会ってもらう必要があります。人数が多いと、それだけで時間がかかります。土地家屋調査士に、どこまで調査を依頼できるかを聞いてください。

官民境界の確認

土地が道路や水路に接している場合、その道路や水路を管理する市区町村、都道府県、国との境界を確認する手続きが必要になることがあります。これを官民査定と呼びます。

行政の手続きが入るぶん、民間同士の確認より日数がかかります。道路に面した土地なら、この工程を見込んで日程を組んでください。

私道に接している場合は、さらに事情が変わります。私道の持ち分が誰にあるか、通行や掘削の承諾が取れているかまで確認することになります。実家が古い住宅地にあるなら、ここは早めに調べておいてください。

境界標がなくなっているとき

現地に境界標がひとつも残っていない、という実家は珍しくありません。工事で抜かれた、土に埋もれた、経年で失われたといった理由です。この場合は、過去の測量図や隣地の資料から位置を復元することになります。民法では、土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができるとされています。復元した位置には、確定測量のあとに新しい境界標を入れておくことになります。

復元の材料になるもの

  • 過去の地積測量図:法務局に備え付けられていれば有力な資料です
  • 隣地の測量図:隣が測量していれば、その図面が使えます
  • 公図と航空写真:形と並びの手がかりになります
  • 古い写真:塀や樹木の位置が写っていることがあります
  • 近隣の方の記憶:長く住んでいる方が、以前の杭の位置を覚えていることがあります

設置しておく意味

境界標を入れておけば、あとから見て分かる状態になります。実家じまいのあと、買主が建て替えるときにも役立ちます。

費用は隣地と分けるという考え方が民法に定められていますが、実務では話し合いで決まります。設置の前に、負担をどうするかを確認してください。

(出典)e-Gov法令検索:民法

隣地とのやり取りで気をつけること

玄関先での挨拶と手渡す書面

境界の確認は、隣の方の協力がないと進みません。立ち会いを断られる、署名をもらえないという事態は実際に起こります。長く空き家にしていた、庭木が越境していた、雑草が伸びていたといった経緯があると、感情の面から話が止まります。測量を頼む前に、まず挨拶に行くところから始めてください。「実家を整理することになりました」と伝えるだけで、その後の空気は変わります。相手にも予定があるので、日程には余裕を持って相談してください。

挨拶のときに伝えること

  • 誰が窓口になるか:連絡先を渡しておきます
  • これから何をするか:測量と立ち会いのお願い
  • いつごろか:おおよその時期を伝えます
  • 迷惑をかけていた点:庭木や雑草があれば先に詫びます
  • 今後の予定:売る、解体するなど、分かる範囲で

越境している庭木があるとき

こちらの木が隣に越えている場合は、先に手を入れておくのが筋です。民法では、土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができるとされています。つまり、隣から見れば切除を求められる立場です。

庭木の手入れと費用は庭木の伐採費用はいくら?高さ別の目安と依頼先にまとめています。

雑草も同じです。空き家にしている間に伸びた草が隣の敷地に入っている、種が飛んでいるという状態だと、立ち会いを頼む前の空気が悪くなります。測量の日程を決める前に、一度草を刈っておいてください。

(出典)e-Gov法令検索:民法

費用の考え方

測量費用の見積書と電卓

費用は、土地の広さ、形、隣地の数、官民境界の有無で変わります。隣地が多いほど立ち会いの回数が増え、道路に接していれば行政との手続きが加わります。民法には、境界標を設けるときの費用について、境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担するという定めがあります。これは境界標の設置に伴う費用の話で、売却のために行う確定測量の費用とは別のものです。実務では、売却のために測量する側が全額を負担することが多くあります。誰がどこまで払うのかは、依頼する前に確認してください。

費用が上がる要因

  • 隣地の数が多い:立ち会いの回数が増えます
  • 道路や水路に接している:官民境界の手続きが加わります
  • 土地の形が複雑:測る点が増えます
  • 境界標がひとつも残っていない:復元に手間がかかります
  • 隣地の所有者と連絡が取れない:調査に時間がかかります

見積もりで確認すること

  • どこまでが料金に含まれるか:立ち会い、書面作成、登記まで含むか
  • 官民査定の費用:別途かかることがあります
  • 境界標の設置費用:新しく設置する場合の費用
  • 追加費用が出る条件:立ち会いが不調に終わったときの扱い
  • 納期の目安:何か月かかるか

「一式」の見積もりは、内訳に分けてもらってください。あとから追加が出る余地を残していることがあります。

(出典)e-Gov法令検索:民法

話がまとまらないときの制度

法務局の建物と受付案内

隣地の所有者と話し合っても筆界について合意できない場合、筆界特定制度という仕組みがあります。不動産登記法では、土地の所有権登記名義人等は、筆界特定登記官に対し、当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界について、筆界特定の申請をすることができると定められています。筆界特定とは、筆界の現地における位置を特定することで、位置を特定できないときはその範囲を特定することとされています。裁判より短い期間で判断が得られる仕組みとして用意されています。

制度を使うときの流れ

  1. 管轄の法務局に申請する:対象土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局に、所有権登記名義人等が申請できます
  2. 筆界特定を必要とする理由を示す:申請の要件として定められています
  3. 手数料を納める:政令で定めるところにより納付します
  4. 調査と意見聴取が行われる:現地の調査と、関係者からの聞き取り
  5. 筆界特定の結果が示される:筆界特定書が作成され、手続の記録は対象土地の所在地を管轄する登記所で保管されます

訴訟という選択肢

筆界特定の結果に納得できない場合や、所有権の範囲そのものを争う場合は、訴訟という手段があります。筆界を確定する訴訟と、所有権の範囲を争う訴訟は別のものです。

どちらにあたるかで手続きが変わるため、弁護士に相談してから判断してください。実家じまいの日程に大きく影響します。

きょうだいで相続した実家なら、争うかどうかを相続人全員で決めることになります。時間と費用がかかるうえ、結論が出るまで売却は進みません。相続人の間で方針が割れると、そこでも足が止まります。

(出典)e-Gov法令検索:不動産登記法

境界が確定しないまま売る方法

境界標のない土地の角

時間がない、費用をかけられないという場合、現況のまま売るという選択もあります。買取業者は、境界が未確定でも買い取ることがあります。ただし、その分だけ価格は下がるのが一般的です。買主が測量の手間とリスクを負うためです。相続税の納付期限が迫っている、遠方で管理が続けられないといった事情があるなら、価格差を承知のうえで選ぶことになります。測量にかける費用と、価格の下がり幅を比べて判断してください。どちらが得かは、土地の広さと隣地の数で変わります。

判断の材料

状況 向いている選択
時間に余裕がある 確定測量をしてから仲介で売る
期限が迫っている 現況のまま買取に出す
隣地と関係が悪い 買取、または筆界特定を検討
測量費が出せない 買取業者に相談する

売り方の違いは空き家の売却方法は?仲介と買取の選び方と流れ、税金は相続した家を売るときの税金は?控除と計算の順番にまとめています。

名義が先

どの道を選ぶにしても、名義が亡くなった親のままでは売れません。測量の依頼も、所有者として行うことになります。

相続登記の進め方は相続登記は自分でできる?必要書類と費用・手順、協議書は遺産分割協議書の書き方は?記載事項と印鑑の注意点で扱っています。

まとめ:売ると決めたら、まず境界の状態を見る

境界の確認は、売ると決めた時点で着手するのが正解です。売り出してから測量を求められると、立ち会いの日程調整だけで数か月かかることがあります。まずは登記事項証明書、公図、地積測量図を法務局で取り、現地に出て境界標が残っているかを探してください。書類と現況の両方を見ないと、いまどういう状態なのかは分かりません。境界標が残っていれば、そこから話は早く進みます。なければ、過去の測量図から復元することになります。測量が済んだら、新しい境界標を入れておいてください。位置が現地に残っていれば、あとで調べ直す手間がかかりません。

覚えておきたいのは、筆界と所有権の範囲は別のものだという点です。筆界は登記されたときに定まった公的な線で、話し合いでは動かせません。塀の位置が境界だと思い込まないでください。

話し合いで筆界の合意ができないときは、筆界特定制度を使う道が残っています。訴訟に比べて結論が出るまでの期間が短い手続きとされています。時間も費用もかけられないなら、現況のまま買取に出す判断もあります。

この記事では、測量の技術的な内容や、訴訟の詳しい手続きは扱っていません。仲介と買取のどちらを選ぶかは空き家の売却方法は?仲介と買取の選び方と流れ、実家じまい全体の順番は実家じまいとは?進め方の全手順と費用相場を順番どおりに解説をご覧ください。

境界の話は、隣の方との関係が絡むぶん気が重くなります。それでも、先に挨拶をして事情を伝えておけば、たいていは進みます。長く空き家にしていた申し訳なさもあって足が向かないという方もいますが、そこを飛ばすと結局あとで時間がかかります。

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