農地を相続したときの手続き|届出の出し方と手放す選択肢

進め方ガイド

実家を相続する手続きを進めていると、固定資産税の通知や登記事項証明書に「田」「畑」の土地が出てくることがあります。自分は耕さないし、借り手のあてもない。

農地を相続したら、相続登記のほかに農業委員会への届出が要ります。 相続で受け継ぐこと自体に農地法の許可は要りませんが、届出は別に必要です。

当サイトは不動産の売買や農地の仲介を請け負う事業者ではなく、条文と公的資料にあたる立場から書いています。個別の判断は、農地のある市町村の農業委員会や、司法書士などの専門家に相談してください。

手続きの中身、できること・できないこと、手放すときの選択肢の順に整理しました。

確認の順番で迷ったときは、お問い合わせからご相談ください。個別の判断はお答えできませんが、順番の整理はお手伝いできます。

  1. 農地を相続したら、やるべき手続きは2つある
    1. 相続登記と農業委員会への届出は別の手続き
    2. 相続で受け継ぐだけなら、許可は要りません
    3. この記事で扱わないことと、先に読みたい記事
  2. 農地の権利を動かすには農業委員会の許可が要る
    1. 売買や貸し借りには農地法第3条の許可が要る
    2. 相続や遺産分割が許可の対象から外れる理由
    3. 相続と売買では、必要な手続きがまるで違う
  3. 農業委員会への届出の出し方と、出さなかったとき
    1. 届出は、農地のある市町村の農業委員会に出す
    2. 届出書に書くのは、決められた5つの項目だけ
    3. 出さないと10万円以下の過料の対象になる
  4. 相続した農地で、できることとできないこと
    1. できること・できないことの一覧で確かめる
    2. 宅地にするには都道府県知事等の許可が要る
    3. 貸すという選択と、農地中間管理機構の役割
  5. 自分で耕さない農地を手放すときの3つの道
    1. まずは地元の農業委員会に相談してみるのが早い
    2. 相続土地国庫帰属制度が使えるかどうかを見る
    3. 農地だけを選んで相続放棄することはできない
  6. 放っておくと農業委員会の意向調査の対象になる
    1. 農業委員会は毎年1回、利用の状況を調べている
    2. 使われていない農地は利用意向調査の対象になる
    3. 固定資産税と管理の手間は、持ち続けるかぎり続く
  7. 農地かどうかは、登記の地目では決まらない
    1. 農地とは「耕作の目的に供される土地」のこと
    2. 登記の地目が田でも、農地でないことがある
    3. 判断に迷うときは、農業委員会で確かめてもらう
  8. 実家の農地の相続でつまずきやすい4つの疑問
    1. 農地が複数の市町村にまたがるときはどうするか
    2. 遺産分割がまとまっていないときはどうなるか
    3. 相続人が農業をしていなくても届出は必要なのか
    4. 届出をしても、相続登記が済むわけではない
  9. まとめ|相続登記と農業委員会への届出をセットで

農地を相続したら、やるべき手続きは2つある

農地を相続してからの4ステップ:田畑の書き出し、現況の確認、相続登記、農業委員会への届出

やることは2つです。相続登記と、農業委員会への届出。

相続で受け継ぐこと自体に、農地法の許可は要りません。ただし届出は別に必要で、出さないと過料の対象になります。

この2つは目的も出し先も違うので、分けて考えてください。登記は法務局、届出は農地のある市町村の農業委員会です。

なお、登記の地目が「田」「畑」でも、農地に当たらないと判断されることがあります。その確かめ方は、この記事の後半で扱います。

まずは、課税明細書で地目が「田」「畑」の土地を書き出すところから始めてください。地番と面積が分かれば、どちらの手続きも同じ情報で進みます。

相続登記と農業委員会への届出は別の手続き

相続登記は、その土地の名義を相続人に変える手続きです。相続登記は義務になっていますが、これは農地に限った話ではありません。

登記そのもののやり方は、農地でも変わりません。書類と手順は、この章の最後の項に置いたリンク先にまとめてあります。

農業委員会への届出は、農地の権利が誰に移ったかを農業委員会が把握するためのものです。登記が済んでも、この届出は残ります。

逆に、届出を出しても登記が済むわけではありません。2つは並行して進める、別々の手続きです。

相続で受け継ぐだけなら、許可は要りません

農地の売買や貸し借りには、農業委員会の許可が要ります。ただし相続で受け継ぐことは、この許可の対象になる権利移動には当たりません。

「農地は許可がないと相続できない」という誤解がありますが、そうではありません。相続そのものは、当事者が話し合って権利を動かす行為ではないからです。

遺産分割や、包括遺贈で受け取る場合も、それぞれ別の規定で許可の対象から外れています。詳しくは次の章で条文ごとに整理します。

許可が要らないことと、届出が要らないことは別です。ここを取り違えると、届出を出しそびれます。

この記事で扱わないことと、先に読みたい記事

相続登記の書類と手順は扱いません。相続登記は自分でできる?必要書類と費用・手順を読んでください。

相続放棄の全体像は相続放棄のデメリットは?実家を手放す前の確認点にまとめました。相続手続き全体の期限は相続手続きの期限一覧|起算点と後回しにできない順番で整理しています。

国に引き取ってもらう制度の申請手順は相続土地国庫帰属制度とは?使えない土地と費用、申請の順番で扱っています。同記事には「山林・農地・原野は対象になるのか」という章があります。

相続税の計算と、農地の納税猶予の要件も扱いません。金額に関わる判断は税理士に相談してください。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

農地の権利を動かすには農業委員会の許可が要る

役所のカウンターで書類を差し出す手元

農地法第3条第1項は、農地について所有権を移したり、賃借権などを設定・移転したりする場合には、当事者が農業委員会の許可を受けなければならないと定めています。売買も、貸し借りも、この対象です。

ただし相続で受け継ぐこと自体は、この許可の対象になる権利移動には当たりません。遺産分割は同項第12号で、包括遺贈や相続人に対する特定遺贈は農地法施行規則第15条第5号で、それぞれ許可の対象から外れています。

外れている理由は、どれも売買のように新しく相手を選んで権利を移す取引ではなく、相続にともなう承継の一場面だからです。だからこそ、あとから農業委員会が把握するための届出が別に用意されています。

売買や貸し借りには農地法第3条の許可が要る

第3条第1項の柱書が対象にしているのは、農地または採草放牧地について所有権を移転する場合です。地上権・永小作権・質権・使用貸借による権利・賃借権などを設定または移転する場合も含まれます。

これらは当事者が農業委員会の許可を受けなければなりません。

許可が要るのは、農地が耕作のために使われ続けるかどうかを確かめるためです。誰にでも自由に売買できると、耕されない農地が増えてしまいます。

条文には「ただし、次の各号のいずれかに該当する場合…は、この限りでない」という但し書きがあり、多数の例外が並んでいます。相続に関わるものは、そのうちの一部です。

売買や貸し借りを考えるなら、まず買い手・借り手が許可の要件を満たすかを農業委員会に聞くところから始まります。

相続や遺産分割が許可の対象から外れる理由

外れ方は3つあり、条文の場所がそれぞれ違います。同じ「相続」でも根拠が違うので、分けて押さえてください。

  • 単純に相続で受け継ぐ場合:そもそも第3条第1項が対象とする「権利の設定・移転」の行為に当たらない
  • 遺産の分割による場合:第3条第1項第12号で、許可の対象から外れている
  • 包括遺贈・相続人に対する特定遺贈による場合:農地法施行規則第15条第5号で、許可の対象から外れている

3つ目には注意点があります。許可は要らなくても、届出は必要です。

施行規則第18条は、届出が要らない場合として第15条各号を挙げつつ、第5号だけを除いています。つまり包括遺贈などで受け取った場合も、農業委員会への届出は出すことになります。

相続と売買では、必要な手続きがまるで違う

自分のケースがどちらかで、やることが変わります。表にすると次のとおりです。

場面 農業委員会の許可 農業委員会への届出 根拠
相続で受け継ぐ 要らない 要る 農地法第3条の3
遺産分割で取得する 要らない 要る 農地法第3条第1項第12号/第3条の3
包括遺贈・相続人への特定遺贈で取得する 要らない 要る 施行規則第15条第5号/第18条第5号
売る・買う 原則として要る 要らない 農地法第3条第1項
貸す・借りる 原則として要る 要らない 農地法第3条第1項

許可を受けて権利を取得した場合は、届出の対象から外れます。第3条の許可と第3条の3の届出は、どちらか一方と考えると整理しやすくなります。

なお、市街化区域内の農地を転用するときの届出は、これとは別の手続きです。転用の話は後の章で扱います。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

(出典)e-Gov法令検索:農地法施行規則

農業委員会への届出の出し方と、出さなかったとき

机に広げた届出の用紙と封筒

届出先は、その農地の存する市町村の農業委員会です。条文は「遅滞なく」と定めていて、日数は書かれていません。

書く項目は農地法施行規則で5つに決まっていて、難しい内容ではありません。届出をせず、または虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料の対象になります。

期限の目安は届出先の農業委員会が案内していることが多いので、電話で確かめてください。相続手続き全体の期限との関係は相続手続きの期限一覧|起算点と後回しにできない順番にまとめてあります。

届出は、農地のある市町村の農業委員会に出す

農地法第3条の3は、権利を取得した者について「遅滞なく…その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない」と定めています。自分が住んでいる市町村ではなく、農地のある市町村です。

条文が定めているのは「遅滞なく」だけで、何か月以内という期間は書かれていません。農地法にも農地法施行規則にも、日数の定めはありません。

期限の目安は、届出先の農業委員会に電話で聞くのが確実です。相続の相談で来庁したついでに聞いておくと、二度手間になりません。

農地が複数の市町村にある場合の扱いは、この記事の後半で触れます。

届出書に書くのは、決められた5つの項目だけ

施行規則第19条が、届出書に書く事項を定めています。次の5つです。

書く項目 中身
権利を取得した者の氏名及び住所 法人なら名称・主たる事務所の所在地・代表者名
権利を取得した農地又は採草放牧地の所在、地番及び面積 登記事項証明書や課税明細書で確かめる
権利を取得した事由及び権利を取得した日 「相続」「遺産分割」など、取得した理由と日付
取得した権利の種類及び内容 所有権か、賃借権かなど
所有権を取得した場合の国籍等 個人は国籍。法人なら設立の準拠法を制定した国

様式は農業委員会が用意していることがほとんどです。登記事項証明書や、相続関係が分かる書類の添付を求められることがあるので、必要書類も一緒に聞いておきます。

面積や地番は、固定資産税の課税明細書からも拾えるはずです。書き写す前に、地目が「田」「畑」の土地を一覧にしておくと早く進みます。

出さないと10万円以下の過料の対象になる

農地法第69条は、「第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する」と定めています。届出を出さないことも、内容を偽ることも対象です。

過料は刑罰ではなく、行政上の秩序罰にあたります。実際に処せられることがある、という程度で受け止めてください。

大切なのは、過料を恐れて急ぐことではありません。登記の手続きを進めるついでに、届出も済ませてしまうのが現実的です。

登記のために法務局へ行く日と、届出のために農業委員会へ行く日を、同じ帰省にまとめておくと動きやすくなります。すでに相続から時間がたっているときも、後回しにせず届出先へ確かめてください。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

(出典)e-Gov法令検索:農地法施行規則

相続した農地で、できることとできないこと

農業委員会の許可が要る場面と、農業委員会への届出が要る場面の比較

必要な手続きは、やりたいことによって変わる仕組みです。相続の手続きを済ませたあとは、自分で耕す、そのまま置いておくのに追加の手続きは要りません。

人に貸す、売るには農業委員会の許可が要ります。宅地などに変える転用と、転用のために権利を動かす場合は、原則として都道府県知事等の許可が必要です。

「農地は売れない」と書かれた記事もありますが、正確ではありません。許可の要件を満たす相手になら売れる、というのが条文の建て付けです。

何をしたいかが決まれば、聞きに行く相手も決まります。まずは、やりたいことを1つに絞ってください。

できること・できないことの一覧で確かめる

やりたいことを左の列から探してください。必要な手続きと根拠が右に並びます。

やりたいこと 必要な手続き 誰の許可・届出か 根拠
自分で耕す 追加の手続きなし — —
そのまま置いておく 追加の手続きなし — 農地法第30条・第32条(調査の根拠)
人に貸す 許可 農業委員会 農地法第3条第1項
農地として売る 許可 農業委員会 農地法第3条第1項
自分で宅地などに変える 許可 都道府県知事等 農地法第4条第1項
転用する人に売る・貸す 許可 都道府県知事等 農地法第5条第1項

そのまま置いておく場合も、農業委員会から利用意向調査が来ることがあります(詳しくは後述)。市街化区域内の農地には、転用の許可について例外があります。

手続きが要らないことと、責任がないことは別です。農地法第2条の2は、農地について権利を持つ者に対してその農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならないと定めています。

許可が下りるかどうかは、区域や相手の状況で変わります。この表は「どこに聞けばよいか」の地図として使ってください。

宅地にするには都道府県知事等の許可が要る

農地法第4条第1項は、農地を農地以外のものにする場合には都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。ここでいう都道府県知事等には、農林水産大臣が指定する市町村の長も含まれます。

第5条第1項が定めているのは、転用のために権利を設定・移転する場合の許可です。当事者が都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

売る相手が宅地にするつもりなら、こちらの許可にあたります。

市街化区域内の農地は例外です。 あらかじめ農業委員会に届け出れば、転用の許可は要りません(第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)。

実家の農地がどの区域にあるかは、農業委員会か市町村の都市計画の窓口で確かめられます。転用できるかどうかを、記事や相場から判断しないでください。

最初に聞くのは、やはり農地のある市町村の農業委員会です。転用の窓口も案内してもらえます。

貸すという選択と、農地中間管理機構の役割

自分で耕さないなら、貸すという選択があります。ただし貸し借りにも、第3条第1項の許可が必要です。

農地法の条文には、農地中間管理機構が農業委員会に届け出て権利を取得する場合という例外も並んでいます。機構は都道府県ごとに置かれ、農地を借りて担い手にまとめて貸し出す仕組みです。

借り手を自分で探すのは簡単ではありません。まず農業委員会に、地域に借り手がいるかを聞くところから始めるほうが現実的です。

貸した場合も所有者は自分のままなので、固定資産税は続きます。この点は後の章で扱います。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

(出典)e-Gov法令検索:農地中間管理事業の推進に関する法律

自分で耕さない農地を手放すときの3つの道

耕作されなくなった田と、その先に見える集落

手放す道は3つあります。地元で買い手や引き受け手を探す、相続土地国庫帰属制度を使う、相続そのものを放棄する。

このうち相続放棄は、農地だけを選んで放棄することができません。相続財産全体に及ぶため、実家や預貯金も一緒に手放すことになります。

現実的に最初に当たるのは、地元の農業委員会への相談です。制度を調べる前に、地域に受け手がいるかどうかを聞くほうが早く進みます。

どの道を選ぶにしても、判断の材料は同じです。地番と面積、それに現況がどうなっているかの3つがそろえば、相談の話が前に進みます。

まずは地元の農業委員会に相談してみるのが早い

農業委員会は、その区域の農地の状況をいちばんよく把握しています。誰が農地を広げたがっているか、機構への貸し出しが動いているかを把握している場合があります。

聞くときは、地番と面積、現況(耕作されているか、荒れているか)を伝えられるようにしておきます。課税明細書と、現地で撮った写真があると相談しやすくなります。

その場で買い手が見つかるとは限りません。ただ、次に何を調べればよいかは絞りやすくなります。

なお、貸す形にした場合は手放したことになりません。相続放棄を除けば、手放すことになるのは売る場合と国に引き取ってもらう場合です。

窓口は平日の日中が中心です。実家へ行く日に合わせて、事前に電話で相談の予約ができるか確かめておきます。

相続土地国庫帰属制度が使えるかどうかを見る

引き取り手が見つからないときの選択肢が、相続土地国庫帰属制度です。相続で取得した土地を、要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。

ただし引き取ってもらえない土地の条件が細かく定められていて、申請すれば必ず通るものではありません。費用も申請の手数料と負担金の2つに分かれます。

制度の中身と申請の順番は相続土地国庫帰属制度とは?使えない土地と費用、申請の順番にまとめました。同記事には「山林・農地・原野は対象になるのか」という章があり、農地の扱いもそこで整理しています。

農地の場合は、先に地元で受け手を探すほうが早いこともあります。両方を並行して調べておくと、待ち時間が無駄になりません。

農地だけを選んで相続放棄することはできない

「農地だけ要らない」という相談は少なくありません。ただし相続放棄は、相続財産の全体に対して行うものです。

農地だけを外して、実家や預貯金を受け取ることはできません。放棄すると、はじめから相続人でなかったことになる扱いです。

放棄したあとも、現に占有している財産については保存の義務が残る場合があります。詳しくは相続放棄のデメリットは?実家を手放す前の確認点で扱っています。

農地の負担だけを理由に放棄を決めないでください。家や預貯金と合わせて、全体で判断する必要があります。

放っておくと農業委員会の意向調査の対象になる

草が伸びた畑の隅に立つ古い境界杭

そのまま置いておくこと自体は、手続きなしでできます。ただし何も起きないわけではありません。

農地法第30条は、農業委員会は毎年1回、その区域内にある農地の利用の状況についての調査を行わなければならないと定めています。耕作されておらず、この先も耕作されないと見込まれる農地には、利用意向調査が行われる仕組みです。

持ち続けるかぎり、固定資産税と草刈りなどの管理の手間も続きます。放置は「何もしない」ではなく「持ち続ける」という選択です。

農業委員会は毎年1回、利用の状況を調べている

第30条第1項は、農業委員会に対して毎年1回の利用状況調査を義務づけています。必要があると認めるときは、いつでも調査を行うことができるとも定められています。

つまり、耕されていない農地は把握される仕組みです。遠方に住んでいても、農地の状態は見られていると考えてください。

調査は所有者を責めるためのものではありません。地域の農地が使われているかを確かめ、使われていない農地の受け手を探すための手続きです。

連絡が来たときに慌てないよう、現況がどうなっているかは一度見に行っておくと落ち着いて答えられます。

使われていない農地は利用意向調査の対象になる

第32条第1項は、利用状況調査の結果を受けて、所有者等に対し利用意向調査を行うと定めています。対象は、現に耕作の目的に供されておらず、引き続き供されないと見込まれる農地です。

周辺と比べて利用の程度が著しく劣る農地も対象に含まれます。

利用意向調査は、その農地をこの先どうするつもりかを聞くものです。自分で耕すのか、貸すのか、売るのかを答えることになります。

答えを決めておけば、この連絡はむしろ助けになります。農地の受け手と、つながるきっかけになるからです。

放っておいて連絡を無視すると、選択肢は増えません。届いた書面には期限が書かれているので、その範囲で答えてください。

固定資産税と管理の手間は、持ち続けるかぎり続く

所有者である間は、固定資産税がかかります。金額は地目と評価で変わるので、課税明細書で確かめてください。

草刈りなどの管理も続きます。遠方に住んでいると、年に何度か通うか、地元の人に頼むかのどちらかです。

隣の農地や道路に影響が出ると、苦情が来ることもあります。持ち続ける負担は、税金だけではありません。

家屋のほうの税の考え方は空き家の固定資産税は6倍になる?条件と正しい計算にまとめました。農地と家屋では扱いが違うので、分けて考えてください。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

農地かどうかは、登記の地目では決まらない

机に広げた土地の書類と読書用の眼鏡

農地法第2条第1項は、「この法律で『農地』とは、耕作の目的に供される土地をいい」と定めています。登記の地目ではなく、その土地が実際にどう使われているかで決まる、ということです。

ですから、登記の地目が「田」や「畑」でも、長く耕作されていない土地が農地に当たらないと判断されることがあります。逆に、地目が別でも現況が農地なら農地です。

この判断をするのは農業委員会です。農林水産省も、非農地判断や、農地に該当しない土地を農地台帳から除外することについての通知を公表しています。

農地とは「耕作の目的に供される土地」のこと

条文の定義はごく短く、「耕作の目的に供される土地」です。採草放牧地は、農地以外の土地で、主に採草や家畜の放牧のために使われるものとされています。

この定義は現況で判断するという考え方につながります。登記簿の記載は、判断の入口の材料にすぎません。

相続の場面では、まず課税明細書と登記事項証明書で「田」「畑」の土地を拾います。そのうえで、現地がどうなっているかを見に行ってください。

見に行けないときは、写真を撮ってもらうか、地図サービスの航空写真で当たりをつけるところから始めます。

登記の地目が田でも、農地でないことがある

何十年も耕作されず、雑木が生えて山林のようになっている土地があります。こうした土地は、農地に当たらないと判断されることがあります。

判断が変われば、農業委員会への届出も、売買のときの許可も要らなくなります。ただし自分で決めることはできません。

農林水産省が公表している通知には、非農地判断の徹底や、農地に該当しない土地を農地台帳から除外することに関するものが並んでいます。判断の仕組みは国の通知に沿って運用されています。

現況と地目が違うと感じたら、そのまま放置せず農業委員会に伝えてください。

判断に迷うときは、農業委員会で確かめてもらう

「これは農地なのか」を自分で決めないでください。判断するのは農業委員会です。

問い合わせるときは、地番と面積、それに現況の写真があると話が早くなります。何年ごろから耕作されていないかも、分かる範囲で伝えてください。

判断がついてから、届出が要るのか、売買に許可が要るのかが決まります。順番は「現況の確認」→「手続きの確定」です。

判断に時間がかかることもあります。相続登記の期限とは別の話なので、登記は登記で進めてください。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

(出典)農林水産省:農地法等の三段表・農地制度関係通知

実家の農地の相続でつまずきやすい4つの疑問

実家の縁側で書類を広げて確かめる手元

つまずきやすいのは4つです。農地が複数の市町村にまたがるとき、遺産分割がまとまっていないとき、相続人が農業をしていないとき、そして届出と登記の関係。

いずれも、届出の相手は「農地のある市町村の農業委員会」という一点を押さえれば整理できます。目的は農業委員会が権利の移動を把握することです。

答えが分かれる部分は、届出先の農業委員会に確かめる前提で読んでください。運用の細かい部分は地域で違います。

条文が決めているのは届出の相手と、届け出るべき事項までです。様式や添付書類は、農業委員会ごとに用意されています。

農地が複数の市町村にまたがるときはどうするか

条文は「その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会」に届け出るとしています。農地が2つの市町村にあるなら、それぞれの農業委員会が相手です。

まとめてどこか1か所へ出す、という扱いにはなりません。課税明細書は市町村ごとに届くので、それを手がかりに整理します。

同じ市町村の中に農地が何筆あっても、届出先は原則1つです。筆ごとに出すのか、まとめて書けるのかは様式によるので、農業委員会に確かめてください。

遠方の市町村へは郵送で受け付けてもらえることがあります。窓口へ行く前に、電話で聞いておくと往復が減ります。

遺産分割がまとまっていないときはどうなるか

遺産分割がまとまるまで、相続財産は相続人が共有している状態です。この段階でも、相続によって権利を取得したことに変わりはありません。

届出をどう出すかは、農業委員会の様式と運用によります。分割の前に出すのか、まとまってから出すのかを、届出先に確かめてください。

遺産分割によって取得した場合は、農地法第3条第1項第12号で許可の対象から外れています。分割そのものに農業委員会の許可は要りません。

分割がまとまらない場合の進め方は相続登記は自分でできる?必要書類と費用・手順にも整理してあります。

相続人が農業をしていなくても届出は必要なのか

必要です。届出は、農業を営むかどうかで変わるものではありません。

第3条の3が対象にしているのは、権利を取得した者です。耕すつもりがあるかどうかは問われていません。

売買の許可では、取得する人が農地を効率的に利用できるかが要件になります。許可と届出で、見ているものが違うわけです。

「自分は農家ではないから関係ない」と考えて出しそびれるのが、いちばん多い取り違えです。

届出をしても、相続登記が済むわけではない

届出は農業委員会に対するもので、登記は法務局に対するものです。片方を出しても、もう片方は残ります。

農業委員会への届出には、権利の移動を農業委員会が把握するという目的があります。所有権の登記を備える手続きではありません。

順番はどちらが先でも構いませんが、登記事項証明書があると届出書が書きやすくなります。どちらを先にするかで迷ったら、登記から進めてください。

登記の手順と費用は相続登記は自分でできる?必要書類と費用・手順で扱っています。

(出典)e-Gov法令検索:農地法

まとめ|相続登記と農業委員会への届出をセットで

農地の相続で押さえておきたいのは、次の3点です。

  • 相続で受け継ぐこと自体に農地法の許可は要らないが、農業委員会への届出は要る
  • 届出先は農地のある市町村の農業委員会で、条文は「遅滞なく」とだけ定めている
  • 売る・貸すには農業委員会、転用には原則として都道府県知事等の許可が要る

最初の一歩は、課税明細書で地目が「田」「畑」の土地を書き出すことです。 地番と面積が分かれば、農業委員会にも専門家にも同じ情報で相談できます。

実家じまい全体の進め方は実家じまいとは?進め方の全手順と費用相場にまとめました。

運用は市町村で違います。手続きの前に農業委員会へ確認し、順番で迷ったときはお問い合わせからご相談ください。

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