空き家の売却方法は?仲介と買取の選び方と流れ

進め方ガイド

空き家を売る方法は、大きく仲介と買取の2つです。仲介は不動産会社に買主を探してもらう形で、時間はかかりますが価格は高くなりやすいのが特徴です。買取は不動産会社に直接買ってもらう形で、価格は下がりますが早く現金になります。

もうひとつ、建物を残して売るか、解体して土地として売るかという判断もあります。解体すれば買主の幅が広がることもありますが、費用がかかり、更地にすると固定資産税の扱いが変わることがあります。

この記事では、売り方の選び方、売るまでの流れ、実家ならではの注意点を整理します。当サイトは不動産会社ではなく、公的資料を確認して実家じまいの実務をまとめているガイドです。売却時の税金は相続した家を売るときの税金は?控除と計算の順番をご覧ください。

売る前に名義を確認する

登記事項証明書を確かめているところ

実家を売るには、登記の名義が売主本人になっている必要があります。亡くなった親の名義のままでは売れません。相続登記が済んでいるかどうかを、まず登記事項証明書で確認してください。不動産登記法では、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないとされています。売却を決めたなら、名義変更は避けて通れません。

確認する3つのこと

  • 登記名義人が誰か:登記事項証明書で確認します
  • 共有になっていないか:共有なら全員の同意が必要です
  • 抵当権が残っていないか:住宅ローンの登記が残っていることがあります

抵当権が残っていても、完済していれば抹消の手続きができます。書類が見つからない場合は、金融機関に相談してください。

名義変更を先に済ませる

売買の話が進んでから名義変更を始めると、引き渡しの日程に間に合わないことがあります。戸籍をそろえるだけで数週間かかることもあるためです。

手順は相続登記は自分でできる?必要書類と費用・手順、協議書の作り方は遺産分割協議書の書き方は?記載事項と印鑑の注意点にまとめています。

(出典)e-Gov法令検索:不動産登記法

仲介と買取のどちらを選ぶか

不動産会社の応接カウンター

判断の軸は、価格を優先するか、期間を優先するかです。仲介は買主を探す期間が必要で、数か月から1年以上かかることもあります。買取は不動産会社が直接買うため、条件が合えば短期間で現金化できますが、再販売を前提とするため価格は仲介より下がるのが一般的です。相続税の納付期限が迫っている、遠方で管理が続けられないという事情があるなら、買取が現実的な選択になります。どちらか一方に絞らず、まず両方で査定を受けて数字を並べてみてください。

仲介と買取のどちらを選ぶか

仲介 買取
買主 一般の個人など 不動産会社
価格 高くなりやすい 仲介より下がるのが一般的
期間 数か月〜1年以上 条件が合えば短期間
仲介手数料 かかります かからないことが多い
契約不適合責任 売主が負うのが原則 免責とする契約もあります

契約不適合責任という論点

引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合、売主が責任を負うのが原則です。古い実家では、雨漏りやシロアリの被害が引き渡し後に見つかることがあります。

知っていることは正直に伝えるのが基本です。告知書に書かなかったことがあとで発覚すると、責任を問われることになります。買取では、この責任を免除する条件で契約することもあります。

まず査定を受ける

査定は多くの場合無料です。仲介と買取の両方で見積もりを取ると、価格差と期間の差が具体的に見えます。

「田舎だから売れない」と決めつける前に、まず何社かに声をかけて、数字を出してもらってください。

建物を残すか、解体するか

古い家屋と更地になった隣の区画

判断が分かれるのがここです。建物を残したまま売れば解体費用はかかりませんが、買主が限られることがあります。解体して更地にすれば買主の幅が広がることもある一方、費用がかかり、住宅用地の特例が外れて土地の固定資産税が上がることがあります。特例は住宅が建っている土地に適用されるもので、更地にすると対象から外れるためです。売れる見込みが立っていない段階で先に解体すると、税負担だけが増えるという結果になりかねません。順番としては、売り方を決めてから解体の要否を判断するほうが安全です。

建物を残すか解体するかの判断

解体を先にしないほうがよい場合

  • 買主が見つかっていない
  • 売り出してから時間がかかりそう
  • 建物にまだ使える価値がある
  • 費用を先に出す余裕がない

解体したほうが進みやすい場合

  • 建物が傷んでいて、そのままでは危険
  • 買主から更地での引き渡しを求められた
  • 土地の形や立地から、新築向けの需要が見込める

不動産会社に「このまま売るのと、解体してから売るのとで、どちらが早いか」を聞くのがいちばん確実です。地域の需要を知っているのは現地の会社です。

解体の費用は家の解体費用はいくら?内訳と見積もりの比べ方、固定資産税の仕組みは空き家の固定資産税は6倍になる?条件と正しい計算で扱っています。

(出典)e-Gov法令検索:地方税法

売るまでの流れ

売買の書類とボールペン

流れは、査定、媒介契約、売り出し、交渉、契約、引き渡しという順です。仲介なら、不動産会社と媒介契約を結んでから売り出すことになります。契約の種類によって、任せ方と報告の頻度が変わります。売り出してからは、内覧の対応や価格の見直しが必要になります。遠方に住んでいる場合、内覧のたびに現地へ行けないこともあるため、鍵の預け方や現地対応をどうするかを先に決めておいてください。ここを決めずに売り出すと、内覧の依頼が来るたびに予定を空けることになります。

段階ごとにやること

  1. 査定を受ける:複数社に依頼し、価格と根拠を比べます
  2. 媒介契約を結ぶ:契約の種類と期間を確認します
  3. 売り出す:価格を決め、広告を出してもらいます
  4. 内覧に対応する:家財が残っていると印象が下がります
  5. 条件を交渉する:価格、引き渡し日、残置物の扱い
  6. 売買契約を結ぶ:手付金を受け取ります
  7. 引き渡す:残代金を受け取り、鍵と書類を渡します

家財は先に片付ける

内覧で見られるのは、家の状態だけではありません。家財が残っていると、部屋が狭く見え、傷みも目立ちます。

引き渡しの条件として残置物をすべて撤去することを求められるのが一般的です。片付けの順番は実家の片付けはどこから?迷わない順番と進め方、業者選びは実家の片付け業者の選び方|許可の確認と見積もりの比べ方にまとめています。

媒介契約の種類

不動産会社と結ぶ媒介契約には、1社だけに任せる形と、複数社に依頼できる形があります。依頼者への報告の頻度は、専任媒介契約と専属専任媒介契約について宅地建物取引業法で定められています。専任媒介契約では業務の処理状況の報告が2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上とされています。

複数社に依頼すれば窓口は増えますが、どの会社も本腰を入れにくくなるという面もあります。地域に強い会社が1社あるなら、そこに任せるほうが進みやすいこともあります。

契約の期間と、途中で解約できるかどうかは、結ぶ前に確認してください。

契約の種類 ほかの会社へ同時に依頼 自分で買主を見つけたとき 報告の頻度
一般媒介契約 できます 直接契約できます 法律上の定めはありません
専任媒介契約 できません 直接契約できます 2週間に1回以上
専属専任媒介契約 できません 会社を通す必要があります 1週間に1回以上

売り出し価格の決め方

高く出しすぎると売れ残り、下げすぎると損をします。査定額の根拠を聞き、近隣の成約事例を見せてもらうと判断しやすくなります。

売れないまま時間が過ぎると、固定資産税と管理の負担が続きます。期間を区切って、売れなければ価格を見直すという決め方が現実的です。

(出典)e-Gov法令検索:宅地建物取引業法

実家ならではの注意点

家財が残ったままの和室

一般の売却と違うのは、相続がからむ点と、家の状態が分からない点です。相続人が複数いれば全員の同意が必要ですし、境界が確定していない土地では測量を求められることもあります。また、長く住んでいた家には書類が残っていない、増築の記録がないといったことが起こります。売り出す前に、登記、境界、建物の状態の3つを確認しておくと、契約の直前で止まることを避けられます。どれも調べるのに時間がかかるので、売ると決めた時点で着手してください。

境界が問題になる

隣地との境界がはっきりしないと、買主が購入をためらうことがあります。測量では隣地の所有者に立ち会ってもらうことが多く、相手の都合しだいで日程が延びることもあります。

境界確定の進め方は土地の境界確定はなぜ必要?費用と進め方の順番にまとめています。

未登記の増築がある

物置や離れが登記されていないことがあります。登記と現況が食い違っていると、売買の手続きで問題になります。

登記事項証明書と現地を見比べて、建物の数と大きさが合っているかを確認してください。合っていなければ、司法書士や土地家屋調査士に相談することになります。

買主が住宅ローンを使うとき

買主がローンを組む場合、金融機関の審査が通らないと売買が成立しません。売買契約に、ローンが承認されなければ契約を解除できるという条件が付くのが一般的です。

古い建物では、建築確認済証や検査済証が残っていないと審査に影響することがあります。書類が見つからない場合は、不動産会社に相談してください。建築確認を扱う特定行政庁(建築主事を置く市区町村、置いていない場合は都道府県)で、台帳の記載事項証明を取れることがあります。

遠方に住んでいるとき

実家が遠いと、査定、内覧、契約、引き渡しのたびに現地へ行くことになります。どの場面で立ち会いが必要かを先に聞いておくと、往復の回数を減らせます。

契約は郵送や持ち回りで対応できる場合もあります。司法書士が代理で登記の手続きを行うことも一般的です。移動の負担が大きいなら、最初にその事情を不動産会社へ伝えてください。

建物の状態を伝える資料

  • 登記事項証明書:名義、面積、抵当権の有無
  • 公図と地積測量図:土地の形と境界の記録
  • 建築確認済証・検査済証:建てたときの記録
  • 修繕の履歴:屋根や外壁を直した記録があれば
  • 固定資産税の納税通知書:課税の内容が分かります

これらがそろっていると、買主が判断しやすくなり、話が早く進みます。見つからないものは、市区町村や法務局で取り直せる場合があります。

共有名義のとき

きょうだいで共有している場合、売却には全員の同意が必要です。ひとりでも反対すると進みません。

話し合いが難しい場合は、先に持分を整理するという方法もあります。判断に迷うなら弁護士に相談してください。

引き渡しまでにやること

掃除を終えた空き家の玄関と鍵

契約が決まってからも、やることは残っています。家財の撤去、公共料金の解約、鍵と書類の引き渡しです。引き渡しの日には、鍵をすべて渡すことになります。合鍵が何本あるか、誰が持っているかを確認しておいてください。近所の方や親族に預けたままの鍵が出てくることがあります。電気・ガス・水道は、引き渡し日で精算できるよう、前もって連絡しておきます。遠方だと現地に行く回数が限られるので、必要な作業を1日にまとめて段取りを組んでください。

引き渡し前のチェック

  1. 家財をすべて運び出す:物置や納屋の中も忘れずに
  2. 合鍵をすべて集める:本数を数えて渡します
  3. 公共料金を精算する:引き渡し日を伝えて手続きします
  4. 火災保険を解約する:残りの期間分が戻ることがあります
  5. 書類をそろえる:登記識別情報、固定資産税の通知、設備の説明書

火災保険の扱いは空き家の火災保険はどうなる?継続の可否と保険料にまとめています。

残していいものはあるか

「エアコンは置いていってもいいのだろうか」と迷うことがあります。残置物の扱いは契約で決めるものなので、あいまいにしないでください。

残すなら契約書に書き、撤去するなら期日までに出す。ここを口約束にすると、引き渡しの当日にもめます。

引き渡し後にもめないために

売って終わりにするには、引き渡し後に問題が出ない状態にしておく必要があります。古い実家では、雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、傾きといった問題が引き渡し後に見つかることがあります。売主が責任を負うのが原則なので、知っていることは告知書に正直に書いてください。浄化槽がある家では、合併処理か単独処理か、いま稼働中か休止の届出を出しているかも引き継ぐ情報になります。管理者変更の報告とあわせて空き家の実家の浄化槽はどうする?使い続ける・休止・廃止の分け方で扱っています。「言わないほうが高く売れる」という判断は、あとで大きく跳ね返ります。

告知書に書くこと

  • 雨漏りの履歴:直したことがあるなら、その時期も
  • シロアリの被害と駆除の履歴
  • 給排水設備の不具合
  • 過去の災害の被害:浸水や地震で傷んだことがあるか
  • 近隣との申し合わせ:通路の使用、境界の取り決めなど

分からないことを推測で書く必要はありません。「不明」と書いたうえで、買主に確認してもらうという形もあります。

一般の流通に乗りにくいときの選択肢

山あいの集落に建つ空き家

市区町村が運営する空き家バンクという仕組みもあります。空き家の情報を登録し、移住や活用を考えている人とつなぐもので、登録は無料のことが多く、地域によっては改修の補助金と組み合わせられます。ただし、あくまで情報を掲載する場であり、売買の仲介そのものは不動産会社が行うのが一般的です。すぐに買主がつくとは限らないため、仲介や買取と並行して検討する形になります。登録しておいて損はありませんが、これだけに頼る進め方は現実的ではありません。

向いている場合

  • 立地が地方で、一般の流通に乗りにくい
  • 移住希望者に使ってもらいたいという気持ちがある
  • 急いで現金化する必要がない
  • 建物がまだ使える状態にある

登録の条件や進め方は空き家バンクとは?使い方と登録の流れ、注意点にまとめています。

まとめ:名義を直してから、価格と期間で選ぶ

空き家を売る手順は、名義の確認から始まります。亡くなった親の名義のままでは売れないため、相続登記を先に済ませてください。戸籍をそろえるだけで数週間かかることもあり、売買の話が進んでから始めると引き渡しの日程に間に合わないことがあります。共有になっている場合は、全員の同意が要る点も先に確認しておいてください。抵当権が残っていないかどうかも、同じ登記事項証明書で見ておきたい項目のひとつです。完済していれば抹消できます。

売り方は、価格を優先するなら仲介、期間を優先するなら買取です。両方で査定を受ければ、価格差と期間の差が具体的に見えます。建物を残すか解体するかは、売れる見込みが立ってから決めるほうが安全です。更地にすると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が上がることがあります。

実家ならではの落とし穴は、登記、境界、建物の状態の3つです。共有名義になっていないか、境界が確定しているか、未登記の増築がないかを見ます。売り出す前に確認しておけば、契約の直前で止まることを避けられます。引き渡しの日には家財をすべて出し、合鍵を集めて渡すところまでが売却です。ここまで終えて、ようやく実家じまいがひと区切りになります。

この記事では、売却時の税金の計算と、解体の詳しい進め方は扱っていません。税金は相続した家を売るときの税金は?控除と計算の順番、解体は家の解体費用はいくら?内訳と見積もりの比べ方をご覧ください。

売る決断をしたあとは、やることが順番に並びます。まず登記事項証明書を取りに行くところから始めてください。

タイトルとURLをコピーしました