実家じまいの費用に大きな幅があるのは、何をどこまでやるかで内訳が変わるからです。片付けだけで終わる人もいれば、売却や解体まで進む人もいます。だから「相場はいくら」という数字だけを見ても、自分の場合の総額は見えてきません。
きょうだいに相談したいのに、金額が分からないから切り出せない。そんな状態で止まっている方に向けて、費用の内訳と総額の考え方、抑える順番までをまとめました。進め方で迷ったときはお問い合わせからご相談いただけます。
当サイトは片付けや解体を請け負う業者ではありません。制度や税の根拠は各セクションの末尾に公的資料へのリンクとして置き、片付けと解体の相場は事業者が公表している料金プランを比較した目安として示します。なお、実家じまい全体の進め方(相続の確認から家の引き継ぎまでの8つの手順)は実家じまいとは?進め方の全手順と費用相場で解説しています。この記事はお金の話に絞ります。
実家じまいの費用は総額でいくらかかるか

総額を決めるのは「どこまでやるか」です。家財の片付けだけなら数万円から数十万円、そのまま売るなら片付け費用に仲介手数料が加わり、解体して更地にするなら百万円単位の出費が乗ります。大切なのは、先に用意しておく現金と、売却代金の中から支払える費用を分けて考えること。片付け費用や解体費は手元から出ていきますが、仲介手数料は売買契約時に半額、決済時に残額という分け方が一般的で、決済時の分は代金から支払えます。まず自分がどのケースかを見分けてから、金額を積み上げていきましょう。
費用は「片付け」「家の処分」「手続き」の3つに分かれる
実家じまいのお金は、家財の片付け、家そのものの処分、名義変更などの手続きの3つに分かれます。片付けはほぼ全員に発生し、家の処分は売る・貸す・壊す・持ち続けるのどれを選ぶかで金額が変わります。
片付けや解体の見積書だけでは、登記費用や供養代、実家に通う交通費は見えてきません。総額を見誤る原因の多くは、この「見積書に出てこないお金」を数えていないことにあります。電気・水道・ガスの解約や火災保険の手続きも忘れがちです。

自分のケースはどれか、質問に答えて決める
金額を調べる前に自分のケースを先に決めておくと、迷いが減ります。次の質問に答えてみてください。
- 相続はもう発生していますか
- 建物を残しますか、壊しますか
- 家を売りますか、当面は持ち続けますか
- 実家は日帰りで行ける距離ですか
1が「いいえ」、つまり親が存命なら、家の名義人は親本人です。売るには親の意思確認が必要で、判断能力が十分でない場合は程度に応じて後見・保佐・補助のいずれかを申し立てることになります。選ばれた後見人等が本人の居住用不動産を売るには、家庭裁判所の許可も要ります。申立ての費用がかかり、審判によっては後見人等への報酬も発生するため、この段階では片付けまでにとどめる判断もあります。
相続が発生しているなら、2で「残す」かつ3で「持ち続ける」がケースA(片付けだけ)、2で「残す」かつ3で「売る」がケースB(そのまま売る)、2で「壊す」かつ3で「売る」がケースC(解体して売る)です。貸す場合はケースDとして後ほど触れます。4が「いいえ」なら、どのケースでも交通費・宿泊費と作業日数が上乗せされます。

3LDKの一戸建て、木造30坪を想定して積み上げると、次のようになります。
| 費用項目 | A 片付けだけ | B そのまま売る | C 解体して売る |
|---|---|---|---|
| 家財の片付け | 17万〜50万円 | 17万〜50万円 | 17万〜50万円 |
| 解体費 | なし | なし | 90万〜130万円程度 |
| 仲介手数料 | なし | 契約時と決済時に分けて | 契約時と決済時に分けて |
| 相続登記・書類 | 必要(義務) | 必要(義務) | 必要(義務) |
| 先に用意する現金の目安 | 約17万〜50万円+登記実費 | 約17万〜50万円+登記実費 | 約107万〜180万円+登記実費 |
| その後の負担 | 固定資産税が続く | 売却益が出れば申告 | 売却益が出れば申告 |
「先に用意する現金」は、売却が決まる前に自分の手元から出ていく分です。仲介手数料は契約時に半額を払うのが一般的ですが、その時点で買主から手付金を受け取っていることが多いため、ここには含めていません。相続で取得した不動産は、片付けだけで持ち続ける場合も相続登記の申請義務の対象です。先に用意する現金が最も大きいのはケースCで、ケースBは解体費がかからない代わりに買い手が付くまで時間がかかることがあります。
総額が大きく振れる3つの要因
同じ間取りでも見積もりが倍近く違うのは、次の3つが効いているからです。
- 物の量:押し入れや納戸、物置、庭にどれだけ残っているか。間取りより物量が効きます
- 搬出条件:エレベーターのない上階、道が狭くトラックが入れない、といった条件は作業時間を押し上げます
- 実家までの距離:遠方なら交通費と宿泊費がかかり、往復回数も増えます
記事によって金額がばらばらなのは、この3条件が書かれないまま数字だけが並ぶからです。自分の実家の条件に当てはめないかぎり、相場の数字は出発点にすぎません。
家財の片付け・処分にかかる費用

家財の片付けを業者に依頼した場合、間取りと物量でおおむね3万円から60万円台が目安です。金額を決めるのは間取りより物の量と搬出条件で、自治体の粗大ごみ収集を組み合わせると総額を下げられます。追加料金が出る条件は、契約の前に確認しておいてください。当日になって「これは別料金です」と言われると、断りにくい状況で追加費用を受け入れることになります。仏壇や人形など値段が付けにくい品物の扱いも、この段階で見積もりに含めてもらいましょう。
間取り別の費用の目安と作業日数
全国対応の遺品整理・不用品回収業者が公表している料金プランを比較すると、目安は次のとおりです。作業日数も各社のプランに示された標準日数を並べたものです。
| 間取り | 費用の目安 | 作業日数の目安 |
|---|---|---|
| 1K〜1DK | 3万〜10万円 | 半日 |
| 2DK〜2LDK | 9万〜25万円 | 1日 |
| 3LDK〜4LDK | 17万〜50万円 | 1〜2日 |
| 一戸建てまるごと | 20万〜60万円 | 2〜3日 |
先ほどの積み上げ表で17万〜50万円を使ったのは、物置や納屋、庭を含まない3LDK屋内の家財整理を前提にしたからです。屋外までまとめて頼む場合は、この目安に収まらないことがあります。実際の金額は物量・搬出条件・地域・作業範囲(分別、清掃、供養の有無)で変わり、同じ3LDKでも生活したままの状態とある程度片付いた状態では見積もりが大きく違います。
追加料金が発生する条件
見積もりより高くなるのは、条件が後から判明したときです。よくあるのは次の場合。
- 家電リサイクル法の対象品(テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機・エアコン)が含まれていた
- ベッドやタンスの解体が必要だった
- トラックを家の前に停められず、遠くから手作業で運んだ
- 見積もり後に物置や庭の荷物が追加された
いずれも事前に伝えておけば見積もりに入れられます。追加料金が出る条件を書面で確認しておけば、当日の交渉も避けられます。
(出典)環境省:家電リサイクル法
自分でやる・業者に頼む・併用の比較
「自分でやれば安い」は半分正解です。処分費は下がりますが、時間と体力、往復の交通費がかかります。
| やり方 | 費用 | 時間 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 自分でやる | 自治体の処分手数料と運搬の実費のみ | 週末ごとに数か月 | 近距離・物量が少ない |
| 業者に任せる | 3万〜60万円台 | 半日〜3日 | 遠方・物量が多い・期限がある |
| 併用する | 業者費用を圧縮できる | 1〜2か月 | 自分で減らす時間はある |
現実的なのは併用です。紙類や衣類など自分で出せる物を先に減らし、大型家具と重い物だけ業者に任せると、トラックの台数や作業人数が変わり、見積もりの段階から金額が下がります。前提として、次に説明する相続の確認だけは先に済ませておきます。
仏壇・人形・写真など供養にかかる費用
仏壇や位牌、遺影、雛人形、写真アルバム。ごみ袋に入れることをためらう品物が、実家には残っていることが多いものです。閉眼供養(魂抜き)や郵送のお焚き上げを利用すると、数千円から10万円程度が目安で、仏壇の大きさや依頼先によって幅があります。
供養は義務ではなく、気持ちの区切りをつけるための選択肢の1つです。費用をかけずに自治体のルールに沿って処分する方法もあります。品物ごとの手順は捨てにくいモノの始末でまとめています。
家を手放すときにかかる費用と手続き

家をどうするかで費用の形が変わります。そのまま売る場合の仲介手数料は売買契約時と決済時に分けて支払うのが一般的で、解体費は建物の規模と構造で大きく変動します。更地にすると固定資産税が上がる点、相続登記には期限がある点まで含めて判断してください。ここを知らずに「とりあえず解体」を選ぶと、売れないまま税負担だけが増えることがあります。売る・壊す・貸す・持ち続けるの4つを、初期費用と維持費の両面で比べてから決めるのが安全です。
現況のまま売る場合の費用
建物を残したまま売る場合の主な費用は仲介手数料です。宅地建物取引業者が受け取れる報酬には上限があり、売買価格が400万円を超える部分は3%、200万円超400万円以下は4%、200万円以下は5%と定められています(いずれも別途消費税。税込では順に3.3%・4.4%・5.5%)。売買価格が400万円を超える場合は、速算式の「価格の3%+6万円+消費税」で同じ金額になります。ほかに契約書の印紙税、住宅ローンが残っていた場合の抵当権抹消登記、境界がはっきりしないときの測量費もかかります。
見落としやすいのが低廉な空家等の特例です。物件価格が800万円以下の宅地建物については原則の上限を超えて報酬を受け取れることになっており、上限は30万円の1.1倍(33万円・税込)。令和6年7月1日から施行されています。これは依頼者の一方から受け取れる上限額であって、必ず33万円になるという意味ではありません。地方の実家が数百万円で売れる場合、通常の速算式より手数料が高くなることがあるため、媒介契約の前に金額の説明を受けて合意してください。
不動産会社が直接買い取る「買取」なら、仲介手数料はかかりません。ただし売却価格は仲介で売る場合より低くなるのが一般的です。手数料の有無だけでなく、手取り額といつまでに手放したいかの両方で選んでください。
売却益が出た場合にかかるのが所得税・住民税です。売却益は「売った金額 −(取得費+譲渡費用)」で計算しますが、取得費が分からないときは売った金額の5%を概算取得費とすることができます。購入時の契約書が残っていて実際の金額を示せるなら、そちらで計算できます。古い実家ほど契約書が見つからず税額が大きくなりがちなので、権利証や売買契約書を探しておいてください。
相続で取得した家は親の取得日を引き継ぎます。親が取得してから売った年の1月1日までの所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、税率は所得税15%・住民税5%(別途、所得税額の2.1%の復興特別所得税)です。次に説明する3,000万円の特別控除で引き切れる金額なら、税額は出ません。
(出典)国土交通省:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し/国税庁:No.3258 取得費が分からないとき/No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
解体して更地にする場合の費用
解体業者が公表している単価をもとにすると、木造は1坪あたり3万〜4.3万円程度(1平方メートルあたり9,000〜13,000円程度)が目安です。木造30坪なら90万〜130万円程度になります。鉄骨造・鉄筋コンクリート造は解体に手間がかかるため、単価は高めです。ただし、この金額を動かす条件がいくつもあります。
- 建物の構造と延床面積(解体に手間がかかる構造ほど単価が上がります)
- 前面道路の幅と重機が入れるか(重機が使えないと手壊しになり日数が増えます)
- 付帯工事の有無(ブロック塀、樹木、物置、井戸、浄化槽など)
- 残置物が残っているか(家財を残したまま頼むと処分費が上乗せされます)
同じ30坪でも、この条件次第で倍近い差が出ます。先に家財を片付けてから頼むほうが安く収まるので、相見積もりを取り、付帯工事の範囲を見比べてください。解体後は建物滅失登記も必要です。
売らずに持ち続ける・貸す場合の費用
すぐに決められないときは、持ち続ける・貸すという選択肢もあります。初期費用と維持費で比べると違いが見えます。
| 選択肢 | 主な初期費用 | 毎年の維持費 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A 片付けだけ(持ち続ける) | 片付け | 固定資産税・保険・管理 | 傷みが進み選択肢が狭まる |
| B そのまま売る | 片付け・仲介手数料 | 売れるまで固定資産税 | 買い手が付くまで時間がかかる場合がある |
| C 解体して売る | 片付け・解体費 | 更地の固定資産税 | 住宅用地の特例から外れる |
| D 貸す | 片付け・修繕費 | 管理費・固定資産税 | 借り手が付かない可能性がある/一度貸すと空き家の3,000万円控除が使えなくなる |
Dの修繕費は物件の傷み具合で幅が大きすぎるため、前掲の積み上げ表からは外しています。住宅用地の特例は、200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1、それを超える部分は3分の1になる仕組みです。建物があることが前提なので、更地にすると土地の税額はこの軽減がなくなります。固定資産税は毎年1月1日時点の状況で判定されるため、年内に解体すると翌年度から特例が外れます。
持ち続ける場合に注意したいのが空き家の管理です。管理不全空家等や特定空家等に該当すると判断され、勧告を受けると、住宅用地の特例の対象から除外されます。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸、住宅全体の13.8%とされています。
(出典)総務省統計局:住宅・土地統計調査/国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法/e-Gov法令検索:地方税法
相続登記と名義の手続きにかかる費用
親名義のままの家は、相続登記を済ませないと売却を完了できません。買主へ名義を移す前提として必要になるためです。解体そのものは相続人全員の合意があれば進められますが、解体後の建物滅失登記は滅失の日から1か月以内に申請する義務があり、相続登記前でも相続人から申請できます。
かかるのは登録免許税、書類の実費、司法書士に依頼する場合の報酬です。相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の4(0.4%)。価額100万円以下の土地には、令和9年3月31日までの免税措置もあります。戸籍は政令で標準額が決まっていて、戸籍の謄本が1通450円、除かれた戸籍の謄本が1通750円です。相続人をたどると十数通になることもあります。司法書士報酬は自由化されているため事務所ごとに異なり、日本司法書士会連合会が報酬アンケートの結果を公表しています。
金額の見当をつけてみます。免税措置の対象にならない土地建物で、固定資産税評価額が合計500万円なら登録免許税は2万円。戸籍を10通そろえると4,500〜7,500円程度です。住宅ローンが残っていれば抵当権抹消の登録免許税が不動産1個につき1,000円(土地と建物で2,000円)、解体後の建物滅失登記を土地家屋調査士に頼めば数万円かかります。司法書士報酬を含めても、登記まわりは数万円から数十万円に収まることが多い部分です。
期限にも注意が必要です。相続登記は令和6年4月1日から義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。令和6年4月1日より前に発生していた相続も対象で、この場合の期限は令和9年3月31日までです。期限内に遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という簡易な方法で義務を果たせます。ただしこれは「相続人である」と申し出る手続きで、名義を確定させる登記ではありません。所有権移転登記ができていないため売買の決済・引渡しは完了できませんし、遺産分割がまとまったら3年以内に改めて相続登記が必要です。
(出典)法務省:相続登記の申請義務化について/国税庁:No.7191 登録免許税の税額表/e-Gov法令検索:地方公共団体の手数料の標準に関する政令/日本司法書士会連合会:報酬アンケート結果
実家じまいの費用を抑える5つの方法

取り組む順番としては、①物量を減らしてから見積もる ②2〜3社の相見積もりを取る ③買取で相殺する ④自治体の粗大ごみ収集を併用する ⑤補助金と税の特例を使うの5つです。この順番を意識するだけで総額は下がりやすくなります。逆に、片付ける前に見積もりを取り、1社だけで決めてしまうと高止まりします。ただし⑤だけは注意が必要で、補助金の多くは契約や着工の前に申請することが条件です。効果が出るのは最後でも、使えるかどうかの確認は最初に済ませてください。
【方法1・2】物量を減らしてから相見積もりを取る
見積金額は物量に大きく左右されます。だから、見積もりを取る前に自分で出せる物を減らしておくのが最も効果的です。古紙や衣類、まだ使える日用品を先に処分するだけで、当日のトラック台数が変わります。通帳や権利証、保険証券などの書類と、値段が付きそうな品は、先に別の箱へ分けておきます。
そのうえで2〜3社から相見積もりを取ります。間取り、物量の写真、搬出条件、希望日、供養や清掃を含むかどうかを揃えて依頼するのがコツ。総額だけでなく、作業範囲・追加料金の条件・当日の人数まで見比べます。1社だけでは高いか安いかを判断できません。
【方法3・4】買取と自治体の収集で相殺する
まだ価値のある家具・家電・貴金属・着物・骨董品は、処分の前に買取を検討します。買取代金をそのまま片付け費用に充てられるぶん、負担が下がります。片付け業者が買取も行う場合は、査定額と処分費を見積書の上で分けて示してもらってください。
もう1つが自治体の粗大ごみ収集や処理施設への持ち込みで、手数料は業者に依頼するより安く済みます。ただし家庭から出る家財やごみの収集運搬ができるのは、市区町村の一般廃棄物処理業の許可を受けた業者か、委託を受けた業者だけです。買取に必要な古物商許可では代わりになりません。
【方法5】補助金と税の特例を使う
空き家の解体や家財処分に補助金を設けている市区町村があります。対象・要件・金額は自治体ごとに異なり、年度の予算が尽きると受付は終了します。使うつもりなら、実家のある市区町村の窓口かホームページで早めに確認してください。
売却する場合は、税の特例が使える可能性があります。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例では、譲渡所得から最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋・敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円)を控除できます。主な要件は次のとおりです。
- 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売ること
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていたことがないこと
家屋の状態についての要件が、いちばん見落とされます。①譲渡の時に一定の耐震基準を満たす、②売る前に家屋の全部を取り壊す、③買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行うのいずれかが必要です。③は令和6年1月1日以後の譲渡から使えるようになった扱いです。相続してから売るまでの間に人に貸したり誰かが住んだりすると、この特例は使えなくなります。取り壊して土地として売る場合も、取壊し後にその土地を別の建物や構築物の敷地にしていないことが条件です。
なお、亡くなる前に親が老人ホームなどへ入所していた場合も、要介護認定等を受けていたことなど一定の要件を満たせば対象になり得ます。施設で亡くなったから対象外、とあきらめる必要はありません。要件が細かいため、自分の実家が当てはまるかどうかは税務署か税理士に確認してください。
(出典)国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
費用は誰が払うのか・お金がないときの進め方

負担割合を一律に定めた規定はありません。民法には相続財産に関する費用はその財産の中から支弁するという原則がありますが、片付け費用や解体費がこれに当たるかは事情によって判断が分かれます。遺産から自動的に精算されるとも、きょうだいで等分するとも決まっていません。だからこそ、着手前に分担を話し合い、立て替えたら記録を残すことが大切になります。手元にまとまったお金がなくても、売却代金からの支払いや作業の分割で進める方法があります。
きょうだいで分担するときの決め方
相続人が数人いるとき、相続財産は共有になります。家財の処分も建物の解体も、独断で進めず相続人の間で合意しておくのが安全です。そのうえで、着手前に「誰がいくら出すか」「立て替え分を遺産分割で精算するか」を全員で決め、書面かメールに残しておくことをおすすめします。
切り出し方に迷うときは、金額から入らず作業から入る方法もあります。「見積もりだけ取ってみる」と伝えれば、金額という共通の材料ができます。相続税の申告が必要なら、税務上の扱いは税理士に確認を。
(出典)e-Gov法令検索:民法
手元にお金がないときの3つの進め方
まとまった資金がなくても、進め方はあります。
- 売却代金から支払う:仲介手数料は決済時の分を代金から支払えるため、先に用意する現金は片付け費用が中心です
- 作業を分ける:一度に全部を頼まず、まず1階だけ、次に2階と分割して依頼します。買取で相殺しながら進める形もあります
- 自分でできる部分を増やす:処分量を減らせば見積もりも下がります
分割払いや後払いに対応する業者もありますが、総額と支払い条件は書面で確認してから契約を。急がせる相手とは契約しないのが原則です。
立て替えたお金でもめないための記録
後から「誰がいくら払ったか分からない」となるのが、いちばん多いもめ方です。立て替えるときは、次を残しておきます。
- 見積書と請求書、領収書(宛名は立て替えた人の名前で統一)
- 支払った日付・金額・内容が分かる一覧(表計算ソフトで十分です)
- きょうだいへの共有記録(メールで送っておくと日付が残ります)
領収書を1か所にまとめておくだけで、遺産分割の話し合いは楽になります。分担や進め方で迷ったときはお問い合わせからどうぞ。個別の相続や税務の判断はお答えできません。
費用で失敗しないための3つの注意点

安さだけで選ぶと、かえって高くつきます。金額面で後悔しやすいのは、相続の確認前に処分してしまうこと、無料回収に渡してしまうこと、解体の時期を誤ることの3つです。この3点は単なる出費の問題ではなく、選べる道そのものを失う可能性があります。処分してしまった家財は戻せませんし、解体した家も元には戻りません。取り返しがつくかどうかで判断すると、優先順位がはっきりします。動き出す前のひと呼吸が、結果的に総額を下げます。
相続の確認前に処分しない
最も取り返しがつかないのが、相続の方針が決まる前に家財を処分してしまうことです。民法には、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすという規定があります(保存行為などは除きます)。
借金などマイナスの財産があって相続放棄を検討している段階で遺品を売却したり形見分けをしたりすると、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。特に危ないのは、値段の付く品をお金に換えること。相続放棄の判断は原則として相続を知ってから3か月以内です。迷っている段階では手を止めて、弁護士や司法書士へ。
(出典)e-Gov法令検索:民法
「無料回収」と押し買いを避ける
片付けの最中は、少しでも早く物を減らしたくなります。そんなときに巡回する「無料回収」のトラックや、「不用品を買い取ります」という突然の訪問が来ると、つい渡したくなります。
国民生活センターによれば、不用品回収サービスに関する相談件数は2018年度の1,354件から2021年度の2,231件へと増加しています。積み込んだ後に高額を請求される、無料と聞いていたのに処分費を求められる、といった相談です。貴金属だけを強引に買い取られる「押し買い」は特定商取引法の訪問購入にあたり、クーリング・オフの対象になります。困ったときは消費者ホットライン188へ。業者の見分け方は業者選びにまとめています。
(出典)国民生活センター:不用品回収サービスのトラブル
解体の時期を誤らない
解体そのものは選択肢の1つですが、順番を誤ると損をします。売れる見込みが立たないうちに解体すると、更地の状態で税負担が続くことになるからです。
不動産会社に相談すると、「古家付き土地」として売るほうが早いケースもあります。買主が自分で解体して建てたい場合、解体費を織り込んだ価格で買ってもらえるためです。解体を決める前に、現況のまま売れるかどうかを先に確認してください。それだけで、解体費と更地の税負担を避けられることがあります。
費用のことを誰に相談すればいいか

相談先は内容で分かれます。家庭ごみの収集・運搬は市区町村の許可業者か委託業者、売却と解体は不動産会社と解体業者、相続登記は司法書士、税金は税理士です。すべてを一度に相談すると混乱するので、最初の窓口を1つに絞ってください。多くの場合、家をどうするかが決まらないと片付けの範囲も決まらないため、不動産会社への相談から始めると全体が動き出します。無料相談を設けている専門家も多く、初回で費用の全体像がつかめることもあります。
片付け・供養の相談先
片付けは遺品整理業者・不用品回収業者・便利屋などが対応します。出たごみの収集と運搬を誰が担うのかは、必ず確認したい点です。仏壇や人形の供養は、菩提寺、仏具店、供養を専門に扱う事業者が窓口。片付け業者が供養まで請け負う場合もあるので、見積もりの段階で範囲を確かめておくと二度手間になりません。
売却・解体の相談先
家の処分は不動産会社が入口です。査定は家財が残ったままでも受けられますので、片付けを終えてから相談する必要はありません。査定額が分かると、片付けにいくらまでかけられるかの判断がつきます。
相続登記・税金の相談先
名義変更は司法書士、税金は税理士が専門です。相続登記は自分でも申請できますが、相続人が複数いる場合や書類が揃わない場合は依頼したほうが早く進みます。法務局でも手続きの案内を受けられます。当サイトへのご質問はお問い合わせからどうぞ。
まとめ:金額は「順番」で変えられる
実家じまいの総額は作業範囲で大きく変わり、着手の順番によっても抑えられます。①相続の確認 → ②きょうだいで分担を合意 → ③自分で物量を減らす → ④2〜3社から相見積もりを取る。金額としては、家財の片付けが3万円から60万円台、木造30坪の解体なら90万〜130万円程度が加わり、売るなら仲介手数料が上乗せされます。要件を満たし、かつ貸さずに売れば最高3,000万円(対象の相続人が3人以上なら最高2,000万円)の特別控除が使え、相続登記には3年の期限があります。
費用が見えないうちは、誰にも相談できずに時間だけが過ぎていきます。まずは実家の写真を撮り、間取りと物量が分かる材料を揃えるところから始めてください。金額という共通の材料ができれば、きょうだいとの話し合いも動き出します。
※この記事の金額は目安です。制度や料金は年度により変わることがあるため、最新の内容は各機関の公式情報でご確認ください。個別の法律・税務の判断は専門家にご相談ください。

