空き家を放置するとどうなる?税金・罰則・近隣トラブル

進め方ガイド

実家を空き家のまま放置すると、金銭的な負担、行政からの措置、近隣とのトラブルという3つの形で問題が積み上がります。ただし、誰も住んでいないというだけで即座に何かが起きるわけではありません。状態に応じて段階を追って進む仕組みになっています。

いちばん重いのは行政代執行で、市区町村が所有者に代わって解体し、その費用を所有者から徴収する制度です。ここまで至る例は多くありませんが、放置を続ければその段階に進む可能性があります。

この記事では、放置で起こることを段階を追って整理し、いま何をしておけば止められるのかまでを示します。当サイトは不動産会社でも解体業者でもなく、公的資料を確認して実務をまとめているガイドです。実家じまい全体の進め方は実家じまいとは?進め方の全手順と費用相場にまとめました。

放置で起こることは3種類

雑草が伸びた空き家の外観

起こることは、金銭的な負担、行政からの措置、近隣とのトラブルの3つに分かれます。お金では固定資産税と管理費用、行政では空家法にもとづく指導から代執行まで、近隣では草木のはみ出しや不法投棄といった形で表れます。どれも時間とともに重くなりますが、逆に言えば早い段階なら手を打てるということでもあります。まずは全体像を押さえてください。

空き家を放置したときに起こること

お金の問題

誰も住んでいなくても、課税されている以上、固定資産税の負担は原則として続きます。都市計画税は原則として市街化区域の土地・家屋が対象で、課税するかどうかや税率は市区町村によって違います。火災保険も、空き家になると条件が変わったり、契約を継続できなかったりすることがあります。

さらに、建物は人が住まなくなると傷みが早くなります。通気がなく湿気がこもり、雨漏りに気づく人もいないためです。傷みが進むと売却の条件が悪くなりますし、残置物の処分や危険を伴う作業が増えれば解体費も膨らみます。放置している期間は、資産価値が目減りしている期間でもあります。

行政からの措置

空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづき、市区町村は空き家の状態に応じて措置を行います。放置すれば特定空家等になるおそれのある管理不全空家等と、倒壊などの危険がある特定空家等では、進み方が違います。

管理不全空家等は指導、そして勧告まで。特定空家等は助言・指導、勧告、命令、そして行政代執行という順です。勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例から除外され、土地の固定資産税が上がります。ここが税制上の大きな不利益になります。

(出典)国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法

近隣との関係

実際に苦情になりやすいのは、次のようなことです。

  • 庭木や雑草が道路や隣地にはみ出す
  • 屋根材や外壁が飛ぶ、ブロック塀が傾く
  • 郵便物があふれ、不法投棄の場所になる
  • 動物や害虫がすみつく

近隣からの連絡先を用意しておくだけで、問題が大きくなる前に対処できます。遠方に住んでいると気づくのが遅れるので、隣家に連絡先を伝えておくのは有効な備えです。

もう1つ知っておきたいのが、損害賠償の可能性です。ブロック塀が倒れて通行人がけがをした、屋根材が飛んで隣の車を傷つけた、といった場合、建物の所有者が責任を問われることがあります。民法には、土地の工作物の設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたときの責任の定めがあり、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が責任を負うという構造になっています。空き家では所有者自身が占有者と評価される場合もあります。誰も住んでいないから関係ない、とはいきません。

(出典)e-Gov法令検索:民法

段階ごとに何が起きるか

行政からの通知書と封筒

空家法の措置は、空き家の状態によって2つの系統に分かれます。管理不全空家等は指導と勧告まで、特定空家等は助言・指導、勧告、命令、行政代執行という順です。大きな分かれ目は勧告で、ここで住宅用地の特例から除外されます。命令に従わないと過料の対象になり、最終的には代執行で解体され、その費用を請求されます。

段階ごとに何が起きるか

段階 何が起きるか 税金への影響
助言・指導 市区町村から改善を求める連絡が来る 変わらない
勧告 そのあとも改善されない場合に進む 住宅用地の特例から除外される
命令 特定空家等で、勧告に従わない場合に出される 除外は続く
命令違反 50万円以下の過料の対象になる 除外は続く
行政代執行 市区町村が代わりに解体などを行う 費用が所有者に請求される

分かれ目は勧告です。指摘された点を直し、市区町村が確認して勧告が撤回されれば、要件を満たすかぎり再び特例の対象になります。ただし固定資産税は毎年1月1日時点の状況で判定されるため、課税に反映されるのは次の年度からになるのが通常です。助言・指導の段階で手を打てば、税制上の不利益は生じません。

なお、所有者が分からない場合の略式代執行や、危険が差し迫っている場合の緊急代執行など、この順番をたどらない手続きも用意されています。通常は段階を追って進みますが、「必ず4段階を順に踏む」とは限らないことは知っておいてください。

助言・指導

まず市区町村から連絡が来ます。「庭木を切ってください」「屋根の一部が落ちそうなので直してください」といった内容です。この段階では、税額も変わりませんし罰則もありません。

指摘された点を直し、市区町村が確認すれば、次の措置には進みません。遠方で自分では対応できない場合は、その旨を伝えて相談してください。地域のシルバー人材センターや管理代行を紹介してもらえることもあります。

勧告

そのあとも状態が改善されないと、勧告に進みます。勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例の対象から除外されます。これにより土地の課税標準額が上がり、固定資産税が増えます。

金額でいえば、ここが最初に効いてくる段階です。詳しい仕組みは空き家の固定資産税は6倍になる?条件と正しい計算にまとめました。通常は勧告の前に指導があるので、いきなりこの段階から始まることは多くありません。

命令と過料

特定空家等について、勧告にも従わない場合は命令が出されます。命令に違反すると、50万円以下の過料の対象になります。

過料は行政上の秩序罰で、前科がつく刑事罰とは違います。ただし実際に金銭負担が生じます。ここまで来ると、行政としても代執行を視野に入れている段階です。

行政代執行

命令された措置が行われない、行っても不十分、または期限までに完了する見込みがない場合に、市区町村が所有者に代わって解体などを行います。これが行政代執行です。

費用は所有者に請求され、支払わなければ財産の差押えに至ることもあります。放置の行き着く先として、いちばん避けたい形です。

自分で業者を選んで解体すれば、複数社の見積もりを比べられますし、補助金の対象になる場合もあります。代執行では、所有者が業者や工法を比較して選ぶことはできません。同じ「解体する」でも、自分で決めて動くのと、行政に決められるのとでは進み方が違うということです。

いくらの負担になるのか

電卓と家計簿を置いた食卓

放置している間にかかるのは、固定資産税・都市計画税、火災保険料、管理の費用です。ここに、傷みが進むことによる売却条件の悪化が加わります。目に見える出費が小さいので放置しやすいのですが、年単位で積み上がると無視できない額になります。まずは毎年いくら出ていくのかを数字にしてみてください。判断が変わることがあります。

毎年かかるもの

項目 目安 備考
固定資産税・都市計画税 納税通知書のとおり 勧告を受けると土地分が上がる
火災保険料 空き家は条件が変わることがある 契約を継続できない場合もある
電気・水道の基本料金 契約を残す場合 通気や掃除に使うなら残す判断も
管理の費用 サービスの内容によって幅がある 自分で通うなら交通費と時間

遠方から年に数回通うだけでも、交通費と時間は相当な負担になります。管理代行と比べてどちらが現実的かを、金額で並べてみてください。

目に見えにくい損

放置による損は、出ていくお金だけではありません。

  • 傷みが進み、売却の条件が悪くなる
  • 残置物の増加や危険な作業が加わり、解体費が膨らむ場合がある
  • 相続した空き家の3,000万円特別控除の期限が過ぎる
  • 相続登記の期限(3年)が過ぎ、過料の対象になり得る

期限のあるものが混ざっているのが厄介なところです。相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限に加えて、制度そのものの適用期限もあります。昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物でないこと、譲渡対価が1億円以下であることなど、条件も細かく決まっています。相続人が3人以上でその家屋等を取得した場合は、控除額が一人あたり2,000万円になります。放置しているうちに期限が過ぎると、取り返しがつきません。詳しくは相続した家を売るときの税金は?控除と計算の順番にまとめました。

(出典)国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続登記についても、正当な理由なく期限内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。

(出典)法務省:相続登記の申請義務化について

放置してしまう理由と、その解き方

隣家との境に伸びた庭木

放置には理由があります。きょうだいで話がまとまらない、遠方で動けない、片付けが終わらない、決断がつかない。どれも「怠けている」わけではありません。だからこそ、原因ごとに次の一手を決める必要があります。全部を一度に解決しようとせず、いま止まっている部分から動かしてください。

きょうだいで話がまとまらない

共有のまま放置されるのは、よくあるケースです。まず「売る・貸す・持ち続ける」のどれにするかだけを決めるようにしてください。金額や分担は後回しで構いません。

判断材料がないと話は進まないので、不動産会社の査定を1件取ってから集まるのが効率的です。数字が出ると、具体的な条件をもとに話し合いやすくなります。

遠方で動けない

年に数回しか行けないなら、管理は代行に任せ、自分は判断だけを担うという分け方が現実的です。管理代行は月数千円程度から利用できるものが多くあります。

片付けも、写真での見積もりや鍵を預けての作業に対応する業者があります。すべてを自分でやろうとすると止まるので、任せる範囲を広げてください。業者の選び方は実家の片付け業者の選び方にまとめました。

片付けが終わらない

家財が残っているから売れない、と思い込んでいるケースがあります。査定は家財が残ったままでも受けられますし、古家付き土地として現況のまま売れる場合もあります。

片付けの完了を待たずに、売却の相談を先に進めてください。売れる見込みが分かれば、片付けにいくらまでかけられるかの判断もつきます。

決断がつかない

思い出のある家を手放す決断は、簡単ではありません。「今は決めない」という判断をするなら、管理だけは続けると決めてください。

決めないことと放置することは違います。管理しながら保留するなら、傷みや近隣トラブルのリスクを下げられます。判断を先送りにしても、選択肢は残せます。

いま何をすればいいか

空き家の窓を開けて風を通す室内

やることは3つです。現状を確認する、期限を数える、相談先を決めて連絡する。放置が続いているほど、最初の一歩が重く感じられますが、動き出してみると一つひとつは進められます。

現状を確認する

実家の状態を写真に撮ります。外観を四方から、屋根と外壁、庭、室内。これが後の相談すべての材料になります。屋根には上らず、地上や道路側から見える範囲で撮ってください。危ないうえに、専門家に見てもらうほうが確実です。

あわせて、納税通知書と登記の状況を確認してください。名義が誰になっているか、税額がいくらかが分かれば、次の相談が具体的になります。

期限を数える

期限はそれぞれ起算点が違います。混同しないよう、次のように数えてください。

  • 相続放棄:自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月
  • 相続税の申告・納付:相続の開始を知った日の翌日から10か月
  • 相続登記:不動産を相続で取得したことを知った日から3年(令和6年4月1日の時点ですでに取得を知っていた場合は、令和9年3月31日まで)
  • 相続した空き家の3,000万円特別控除:相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日

過ぎているもの、間に合うものを分けるだけで、何を急ぐかがはっきりします。詳しくは実家じまいでやってはいけない7つのことにまとめました。

相談先を決めて連絡する

どこから連絡するかは、状況によって変わります。行政から通知が来ているなら市区町村の空き家対策の担当課、倒壊の危険があるなら同じく市区町村、相続税の期限が近いなら税理士が先です。

そうした事情がなければ、不動産会社への査定依頼から始めて構いません。売れるかどうかが分かると、他の判断も動き出します。指摘された点を直して市区町村が確認すれば、勧告には進みません。解体費の補助金があるかどうかも、同じ窓口で聞けます。詳しくは実家じまいの補助金はいくら?対象条件と申請の順番にまとめました。

遠方でも続けられる管理の形

持ち続けると決めたなら、勧告を受けない状態を保つのが最低限の対策です。とはいえ、遠方から毎月通うのは現実的ではありません。管理代行サービスを使う、近隣に協力を頼む、優先順位をつける。この3つを組み合わせれば、通える回数が少なくても状態を保ちやすくなります。完璧を目指す必要はありませんが、点検と修繕は別のものだという点は押さえておいてください。

まず押さえる項目

苦情や指導につながりやすいのは、外から見える部分です。

  • 庭木と雑草(道路や隣地へのはみ出し)
  • 屋根材や外壁の落下、ブロック塀の傾き
  • 郵便物の滞留(不在が一目で分かる)
  • 敷地内へのごみの投棄

室内の傷みより、まず外回りです。近隣が困るのも、行政に指摘されるのも、多くはこのあたりから始まります。年2回、草の伸びる時期に合わせて手を入れるだけでも状況は変わります。

ただし、これだけで十分というわけではありません。市区町村が空き家の状態を判断する際には、雨水の浸入、柱や梁の腐朽、擁壁や排水設備の状態、害虫の発生なども見られます。見つけた不具合は、点検で終わらせず直すところまでが管理です。浄化槽がある家は、使わないまま放置しても保守点検・清掃・法定検査の義務が続きます。外すには届出が要るので、順番は空き家の実家の浄化槽はどうする?使い続ける・休止・廃止の分け方で確かめてください。

管理代行を使う

空き家の管理を代行するサービスがあります。月1回程度の巡回で、通気、通水、郵便物の確認、外観の点検、写真での報告といった内容が中心です。料金は巡回の頻度と作業の範囲によって変わります。

依頼するときは、巡回の頻度、作業の範囲、報告の形式、庭木の手入れが含まれるかを確認してください。草刈りは別料金というケースが多くあります。巡回は異常を見つけるためのものなので、修繕が必要になったときに誰が手配するかも決めておいてください。

近隣に連絡先を伝えておく

意外に効くのがこれです。隣家に「何かあったら連絡してください」と伝えておくだけで、問題が大きくなる前に気づけます。

台風のあとに屋根材が飛んだ、郵便受けがあふれている、といった連絡をもらえれば、行政から指摘される前に手を打てます。渡す連絡先は携帯番号でもメールでも構いません。防犯の面が気になる場合は、管理代行の連絡先を伝えておくという方法もあります。

よくある質問

確認事項を書いたノートと携帯電話

実際によく聞かれる疑問をまとめました。運用は市区町村によって差があるため、最終的には実家のある自治体に確認してください。ここでの答えは制度の仕組みとしての一般的な整理です。放置している状態は不安が大きいぶん、正確に知るだけで気持ちが落ち着くこともあります。

何年放置すると問題になりますか

年数で決まる仕組みではありません。判断されるのは状態であり、周辺への影響がどれくらいあるかで見られます。管理が続いていれば長く空き家でも連絡が来ないこともあれば、傷みが早ければ短い期間で連絡が来ることもあります。

「3年放置で罰金」といった言い方を見かけますが、そうした一律の決まりはありません。状態に応じて段階を追って進む仕組みだと理解してください。

行政から手紙が来ました。どうすればいいですか

まず連絡してください。無視するのがいちばん良くない対応です。助言・指導の段階なら、指摘された点を直して市区町村が確認すれば、次の措置には進みませんし、税額も変わりません。

遠方で自分では動けない事情があるなら、そう伝えて構いません。管理代行や地域の事業者を紹介してもらえることもあります。放置せず、事情を説明して対応方法と期限を確認してください。

更地にすれば問題は解決しますか

建物がなくなれば、倒壊や飛散の心配はなくなります。ただし土地の固定資産税は上がることが多く、草の管理は残ります。すでに勧告を受けて特例から外れている場合など、状況によっては税額の動きが変わります。

売れる見込みがないまま解体すると、負担だけが増えることになります。順番としては、売れるかどうかを不動産会社に確認してから決めてください。

相続人が複数いて話がまとまりません

まず「売る・貸す・持ち続ける」のどれにするかだけを決めてください。金額や分担は後回しで構いません。

それでも決まらない場合、遺産分割の話であれば家庭裁判所の遺産分割調停という手続きがあります。長期間まとまらないなら、弁護士に相談するほうが早く進むことがあります。

誰も住まないまま何年も経っています。今からでも間に合いますか

間に合うものと、過ぎているものがあります。相続放棄や相続税の申告期限は過ぎていることが多い一方、相続登記は令和6年4月1日の時点ですでに取得を知っていた場合、令和9年3月31日までという猶予があります。

売却を考えているなら、まず不動産会社に現況を見てもらってください。傷みが進んでいても、古家付き土地として売れる地域はあります。いま使える選択肢を数えるところから始めてください。

遠方に住んでいて、年に1回も行けません

行けないこと自体が問題なのではなく、誰も見ていない状態が続くことが問題です。管理代行を入れれば、行けなくても状態を把握できます。

写真つきの報告を受け取れるサービスを選べば、遠方にいても傷みの進み方が分かります。報告で不具合が見つかったときに、誰がどう直すかまで決めておくと機能します。行けない前提で仕組みを作るほうが、無理な帰省計画を立てるより続きます。

まとめ:段階を知れば、止められる

空き家の放置で起こることは、金銭的な負担、行政からの措置、近隣とのトラブルの3つです。行政の措置は助言・指導から始まり、勧告で税が上がり、特定空家等では命令違反で50万円以下の過料、最後に行政代執行という順で進みます。通常はこの段階を追って進みますが、所有者が分からない場合や危険が差し迫っている場合は別の手続きもあります。

止めるのは早いほど簡単です。指導の段階で指摘された点を直せば税額は変わりませんし、管理を続けていれば勧告に至ることも多くありません。決断がつかないなら、「今は決めない、ただし管理は続ける」という選び方でも構いません。

まずは実家の写真を撮り、納税通知書を探し、相続に関する期限をそれぞれの起算点から数えてみてください。それだけで、次に何をすべきかが見えてきます。

※制度の運用や税額は市区町村によって異なります。個別の判断は市区町村の担当課、または弁護士・司法書士・税理士など専門家にご相談ください。

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