空き家の実家の浄化槽はどうする?使い続ける・休止・廃止の分け方

進め方ガイド

保守点検の業者から「契約はどうしますか」と連絡が来た。法定検査の案内が、亡くなった親の名前で届いた。誰も住んでいない家の設備に毎年お金がかかり続けるのは納得しづらいものですが、勝手に止めて罰則があっても困ります。

判断の起点は、当面、実家で水を流す使い方をするかどうかです。片付けに通って水を使うなら管理は続きます。当面使わないなら、清掃をしたうえで使用休止を届け出ると3つの義務が外れ、解体や下水道への接続でやめるなら使用廃止の届出になります。名義が親のままなら、その報告も別に出すことになります。

この記事は、浄化槽法と環境省関係浄化槽法施行規則の条文、環境省が公表している統計、自治体の運用ページをもとに、順番と期限を整理したものです。様式・提出先・「休止」とみなす期間の運用は市区町村や都道府県によって違うので、最後は担当窓口で確かめてください。当サイトは手続きの代行をしていません。

  1. 結論|当面の使い方で3つに分かれる
    1. 当面の使い方で選ぶ判断表
    2. この記事で扱わないこと
  2. 浄化槽の管理者には3つの義務がある
    1. 保守点検の回数は方式と規模で決まる
    2. 法定検査は点検とは別に受ける
    3. 清掃と11条検査の実施率を数字で見る
  3. たまにでも使うなら「使い続ける」側になる
    1. 空き家=使用していない、ではない
    2. 使い続けるあいだにかかるもの
    3. 将来また使う予定でも休止は選べる
  4. 当面使わないなら使用休止の届出で3つの義務が外れる
    1. 休止届は任意、再開届は義務
    2. 清掃をしたうえで、清掃の記録を添えて出す
    3. 「概ね1年以上」は法令ではなく自治体の運用
  5. 解体・下水道接続でやめたら廃止届を30日以内に
    1. 廃止届は義務、期限は30日以内
    2. 休止と廃止の違いを表で見る
    3. 浄化槽の撤去費用は見積もりのどこを確認する?
  6. 相続・売却で管理者が変わったら30日以内に報告
    1. 出すのは新しい管理者
    2. 罰則の規定は無いが期限は法定
    3. 売るときに引き継ぐ記録
  7. 罰則は「何をしたら」かかるのかを条文で分ける
    1. 5万円以下の過料の対象
    2. 受検命令に違反すると30万円以下の過料
    3. 義務・期限・罰則を一覧で分ける
  8. 浄化槽を使わないまま放置するとどうなる?
    1. 合併処理か単独処理かを先に確かめる
    2. 漏水が確認された件数の66%が単独処理
    3. 特定既存単独処理浄化槽と判断された場合の措置
    4. 臭いが出ているときの連絡先
  9. 動く前に確かめる4つのこと
    1. 記録で分かること
    2. 窓口と提出方法を確かめる
    3. 保守点検の契約は別に終わらせる
    4. 誰が管理者になるかを決める
  10. 休止の前の清掃は、通常の清掃と条件が違う
    1. 汚泥・スカム・中間水は全量引き出し
    2. 休止清掃では洗浄水を張り水に再利用できない
    3. 張り水は水道水等を使う
  11. 空き家のブレーカーを落とす前に確認すること
    1. 清掃・届出・停止の順番
    2. ブロワの電源は設備と状況で決まる
    3. 使用を再開するときは保守点検から
  12. 空き家の浄化槽のよくある質問
    1. 親の名前で法定検査の案内が届いたらどうしますか
    2. たまにしか使わない場合はどうなりますか
    3. 休止に期間の上限はありますか
    4. 休止届を出せば費用は一切かかりませんか
    5. 売るときに浄化槽はどう扱われますか
    6. 下水道につないだら浄化槽はどうしますか
  13. まとめ|当面の使い方と記録から決める
    1. 最初にやる4つのこと

結論|当面の使い方で3つに分かれる

たまにでも帰って水を使うなら「使い続ける」で、保守点検・清掃・法定検査の3つは続きます。当面使わないなら、清掃を済ませたうえで使用休止の届出を出すと、この3つが外れます。解体や下水道への接続で使うのをやめたなら、使用廃止の届出を30日以内に出します。そして相続や売却で管理者が変わったときの報告は、この3つの分かれ道とは別の軸です。相続してから休止する場合のように、両方が必要になることもあります。届出の名前が似ているぶん、まず自分がどの行に当たるかを決めてしまうと、その先の順番が見えてきます。

当面の使い方で選ぶ判断表

自分がどの行に当たるかを、先に見てください。

当面の使い方 選ぶもの 出す届出と期限 先にやること 根拠
たまに帰って水を使う 使い続ける なし 保守点検・清掃・法定検査を続ける 浄化槽法 第10条・第11条
当面は使わない 使用を休止する 使用休止の届出(期限の定めなし) 休止に当たっての清掃と、その記録 浄化槽法 第11条の2第1項
二度と使わない(解体・下水道接続) 使用を廃止する 使用廃止の届出(30日以内) 廃止の日を決める 浄化槽法 第11条の3

管理者が変わったなら、上のどれを選んでも管理者変更の報告を別に確認してください。相続で実家を引き継いだ人、買った人が出す側になります。

この記事で扱わないこと

隣り合うテーマは、当サイトの別の記事で扱っています。

この記事の対象外は、下水道への接続工事そのもの、浄化槽の構造や仕組みの詳しい説明、業者の料金比較です。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法

浄化槽の管理者には3つの義務がある

浄化槽法が管理者に求めているのは、保守点検・清掃・法定検査の3つです。誰も住んでいなくても、浄化槽が使用中のままなら続きます。回数は一律ではありません。保守点検は処理方式と処理対象人員で決まり、家庭に多い方式で20人以下なら4か月ごとに1回以上です。清掃は原則として年1回以上、全ばっ気方式はおおむね6か月ごとに1回以上です。法定検査は保守点検とは別に、指定検査機関が水質を見ます。令和6年度の全国集計では清掃の実施率が65.9%、法定検査にあたる11条検査の受検率が50.9%ですが、実施率が低いことは義務が無いという意味ではありません。

浄化槽の3つの義務と、頼む相手を並べた図

保守点検の回数は方式と規模で決まる

浄化槽法第10条第1項が求めているのは、保守点検と清掃です。条文は「毎年一回(環境省令で定める場合にあつては、環境省令で定める回数)、浄化槽の保守点検及び浄化槽の清掃をしなければならない」としています。

その「環境省令で定める回数」が、環境省関係浄化槽法施行規則の第6条です。合併処理浄化槽は同条第2項の表です。分離接触ばっ気方式・嫌気ろ床接触ばっ気方式・脱窒ろ床接触ばっ気方式で、処理対象人員20人以下なら4か月ごとに1回以上とされています。処理対象人員は、その浄化槽が何人分の排水を処理する設計かを示す数字で、算定の基準は日本産業規格(JIS A 3302)です。設置の届出や保守点検の記録で確かめられます。

単独処理浄化槽(みなし浄化槽)は同条第1項の別の表です。分離接触ばっ気方式・分離ばっ気方式・単純ばっ気方式の20人以下なら4か月ごとに1回以上、全ばっ気方式なら3か月ごとに1回以上です。

清掃は第7条が「全ばつ気方式の浄化槽にあつては、おおむね六月ごとに一回以上とする」としており、それ以外は年1回以上です。

委託先は業務ごとに分かれます。第10条第3項は保守点検について、自治体に登録制度があるときは登録を受けた者に、無いときは浄化槽管理士に委託できるとしています。清掃は浄化槽清掃業者に委託できます。

法定検査は点検とは別に受ける

点検をしていれば検査は要らない、ということにはなりません。第11条第1項が別に置いているのが、指定検査機関による検査です。条文は「毎年一回(環境省令で定める浄化槽については、環境省令で定める回数)、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない」としています。

保守点検が設備の手入れ、法定検査が第三者による水質のチェック、という役割の違いがあります。

清掃と11条検査の実施率を数字で見る

環境省の令和6年度の集計では、保守点検の実施率は74.5%、清掃の実施率は65.9%でした。法定検査にあたる11条検査の受検率は50.9%で、合併処理浄化槽だけで見ると67.2%です。

未実施・未受検の浄化槽が相当数あることは数字から読み取れます。これは全国の浄化槽全体の集計で、空き家だけを取り出した率ではありません。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法/環境省関係浄化槽法施行規則/環境省:令和6年度における浄化槽の設置状況等について

たまにでも使うなら「使い続ける」側になる

片付けに通ってトイレを使う、夏に泊まる、といった使い方があるなら浄化槽は使用中で、保守点検・清掃・法定検査の3つが続きます。空き家だから使用していない、とはなりません。使い続けるあいだは、この3つの費用とブロワ(送風機)の電気代がかかります。将来また住むかどうかは、いまの判断を左右しません。片付けに通っているあいだと、片付けが終わったあとで扱いが変わる、と考えると分かりやすくなります。判断の分かれ目は、水を流す使い方をするかどうかの1点です。

空き家=使用していない、ではない

判断の目安は、どのくらいの頻度で、水を流す使い方をするかです。月に何度か片付けに通ってトイレを使っているなら、その間は使い続けている状態になります。

片付けが長引くほど、この期間も長くなります。先に片付けの終わりを決めておくと、休止に切り替える日も決めやすくなります。

使い続けるあいだにかかるもの

金額は設備と地域で変わるので、ここでは何に費用が発生するかだけを挙げます。保守点検の委託、清掃、法定検査の手数料、そしてブロワ(送風機)を動かす電気代です。

それぞれ頼む相手が違います。保守点検は登録を受けた業者か浄化槽管理士、清掃は浄化槽清掃業者、法定検査は指定検査機関です。まとめて1社に頼んでいるつもりでも、内訳は分かれていることがあります。

金額のうち、法定検査の手数料は都道府県の指定検査機関が公表しているので、実家のある都道府県の指定検査機関のページで確かめられます。保守点検と清掃は委託先ごとの見積もりになります。

休止と迷うなら、3年使わない見込みで、続けた場合の3年分を出してみてください。保守点検・清掃・法定検査・電気代の合計です。休止した場合は、休止の清掃1回と、再開するときの保守点検1回が主な費用になります。委託契約を休止扱いにするか解約するかでも変わります。同じ期間・同じ費目で並べることだけ決めておくと比べられます。

将来また使う予定でも休止は選べる

数年後に戻るかもしれない場合でも、当面は排水を流さず、清掃をして届け出るなら休止は選べます。ここで分けたいのは、休止中に排水を流せないことと、将来再開する予定があることの2つです。

第11条の2第2項が再開の届出を置いているとおり、休止はもともと再開を前提にした制度です。季節ごとに使う場合に休止できるかどうかは、使い方を伝えて自治体に確かめてください。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法

当面使わないなら使用休止の届出で3つの義務が外れる

庭の浄化槽のマンホール蓋を持ち上げて中を確かめるところ

当面使わないなら、清掃を済ませて使用休止を届け出ると、再開するまでのあいだ保守点検・清掃・法定検査の3つが外れます。第10条にも第11条にも「使用の休止の届出に係る浄化槽(使用が再開されたものを除く。)については、この限りでない」というただし書きが置かれているためです。届出書には清掃の記録を添えます。届出そのものに期限はありませんが、清掃が先に来る点だけは動かせません。よく見かける「概ね1年以上」という目安は、法令ではなく自治体の運用です。どのくらいの期間から休止として扱うかは、実家のある自治体に確かめてください。

休止届は任意、再開届は義務

条文の書き方が、休止と再開で違います。第11条の2第1項は「…当該浄化槽の使用の休止について都道府県知事に届け出ることができる」、第2項は「…その旨を都道府県知事に届け出なければならない」です。

つまり休止の届出は任意で、再開の届出は義務です。休止の届出には「30日以内」という期限もありません。一方、再開の届出は、休止を届け出た浄化槽について、再開した日または再開を知った日から30日以内です。

清掃をしたうえで、清掃の記録を添えて出す

届出だけ先に出すことはできません。条文は「当該浄化槽の使用の休止に当たつて当該浄化槽の清掃をしたときは…届け出ることができる」と書いており、清掃が先に来ます。

施行規則第9条の3も「様式第一号の届出書に、清掃の記録を添えて行うものとする」としています。清掃を頼んだら、記録を受け取るところまでが一区切りです。

「概ね1年以上」は法令ではなく自治体の運用

「1年以上使わないなら休止届」という説明をよく見かけます。ただ、浄化槽法にも施行規則にも、休止の期間についての要件はありません。

この1年は、自治体の運用から来ています。大分県は「『使用の休止』とは、概ね1年以上の期間、浄化槽を使用しないことをいい、別荘、空き家、独居世帯の長期入院などが該当します」と案内しています。自分の実家がある自治体の案内を見てください。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法/環境省関係浄化槽法施行規則/環境省:環境省関係浄化槽法施行規則の一部を改正する省令等の公布について/大分県:浄化槽使用休止の手続きについて

解体・下水道接続でやめたら廃止届を30日以内に

解体や下水道への接続で使うのをやめたなら、廃止の日から30日以内に使用廃止の届出を出します。家を解体する場合も、下水道につなぐ場合も同じです。こちらは義務で、出さない場合や虚偽の届出をした場合は5万円以下の過料の対象です。任意の休止の届出と違って期限があり、法定の添付書類の規定はありません。撤去するか埋め戻すかは届出とは別に決める話で、自治体の扱いと見積もりの確かめ方は後ろで扱います。工事の日程だけを見ていると30日を過ぎるので、廃止の日を先に決めてください。

廃止届は義務、期限は30日以内

起算点は「使用を廃止した日」です。解体工事の終了日とずれることがあるので、いつを廃止の日とするかを工事の担当者と確かめておくと迷いません。

施行規則第9条の5は、様式第一号の三の届出書を提出すると定めています。

休止と廃止の違いを表で見る

使用休止の届出 使用廃止の届出
届出 任意(届け出ることができる) 義務(届け出なければならない)
期限 定めなし 廃止の日から30日以内
法定の添付書類 清掃の記録 規定なし
その後 使用を再開したときは30日以内に再開の届出 再開の届出は無い(やめたまま)
罰則 虚偽の届出は5万円以下の過料 未提出・虚偽は5万円以下の過料

表にあるのは届出の法定の添付書類です。廃止なら清掃が要らない、という意味ではありません。廃止や撤去の工事で必要になる処理は、これとは別の話です。

浄化槽の撤去費用は見積もりのどこを確認する?

解体の見積もりに浄化槽の行が入っているかを、まず見てください。そのうえで槽の材質と大きさ、撤去の範囲、搬出と処分、埋め戻しと復旧、追加費用が発生する条件まで確かめておくと、あとで金額が動きにくくなります。

費用について、公的機関が公表した金額は見当たりませんでした。国の浄化槽設置整備事業実施要綱は、単独処理浄化槽又はくみ取り槽の撤去に必要な工事費を対象経費に挙げています。ただし金額の記載はありません。対象は「浄化槽設置にあたり撤去が必要な場合であって同一敷地内に浄化槽が設置される場合」で、共同浄化槽を設置する場合はこの限りでない、という例外も置かれています。浄化槽の整備を伴わず、家を解体して撤去するだけの場合に撤去費が補助される、という規定ではありません。自治体が独自に設けている制度は別にあるので、実家のある市区町村に確認してください。

廃止の届出は使用をやめたことの届出で、撤去の方法まで決めるものではありません。ただし、掘り出して撤去するか埋め戻すかを、工事側だけで選べるわけでもありません。周南市は「既設の浄化槽は、原則として掘り出して撤去する必要があります」としています。埋め戻しは、撤去によって埋設配管の破損や家屋倒壊のおそれ等の特別な事情がある場合に限って受け付ける扱いです。特別な事情もなく埋め戻した場合は、廃棄物の不法投棄になる可能性がある、とも書いています。処置の決め方は、実家のある市区町村に確かめてください。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法/環境省関係浄化槽法施行規則/環境省:浄化槽設置整備事業実施要綱/周南市:浄化槽の設置・変更・廃止等の手続き

相続・売却で管理者が変わったら30日以内に報告

相続や売却で管理者が変わったら、新しく管理者になった人が変更の日から30日以内に報告します。第10条の2第3項が定めているもので、届出を出す人が変わるのがこの報告です。相続して休止まで進めるなら、報告と休止の届出の2つを出すことになります。きょうだいで共有するなら、誰が管理者になるかを先に決めないと、届出も点検の依頼も止まります。この報告の未提出に罰則の規定はありませんが、出さないと検査や点検の案内が前の名義に届き続けます。売るときは、合併処理か単独処理か、設置の時期、稼働か休止か、点検と清掃の記録を引き継ぎます。

出すのは新しい管理者

条文にあるとおり、報告する義務を負うのは新しく管理者になった人です。前の管理者や不動産会社の義務ではありません。書類の提出を代理人に頼めるかどうかは、提出先に確かめてください。

共有のままだと、誰が報告書を出すのかが決まりません。だれを管理者とするかを決めて、その人の氏名と住所で作ることになります。

罰則の規定は無いが期限は法定

浄化槽法の罰則の条文には、第10条の2を引くものがありません。報告を出さなかったことに対する過料や罰金の定めは、条文上は無いということです。

ただし「30日以内」は法律が定めた期限です。出さないでいると、法定検査や保守点検の案内が親の名義のまま届き続け、休止や廃止の届出をするときに名義が合わないという実務上の不都合も出てきます。

売るときに引き継ぐ記録

買う人に渡す情報をそろえておくと、引き渡しのあとでやりとりが減ります。

  • 合併処理浄化槽か単独処理浄化槽か
  • 設置の時期
  • いま稼働中か、休止の届出を出しているか
  • 保守点検・清掃・法定検査の記録
  • 把握している不具合

提出先や様式については、後ろの「動く前に確かめる4つのこと」で扱います。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法

罰則は「何をしたら」かかるのかを条文で分ける

5万円以下の過料の対象は、再開の届出と廃止の届出を出さなかった場合か虚偽の届出をした場合、それに休止の届出での虚偽です。この記事で扱うのは、この休止・再開・廃止の3つの届出です。休止の届出を出さないこと自体は対象ではありません。管理者変更の報告にも罰則の規定はありません。法定検査は、受けていないだけですぐに過料になるのではなく、指導や勧告を経た受検命令に違反すると30万円以下の過料です。どこからが法律の話で、どこからが実務上の不都合なのかを分けておくと、必要以上に構えずに済みます。

5万円以下の過料の対象

第68条は「次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の過料に処する」と定めています。第1号は「第十一条の二第一項の規定による届出をする場合において虚偽の届出をした者」。第2号は「第十一条の二第二項、第十一条の三、第十二条の十一又は第十二条の十六第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者」です。

第1号が罰しているのは、休止の届出をするときに嘘を書いた場合です。休止の届出をしないこと自体は、第1号にも第2号にも入っていません。

第2号に並んでいる第12条の11と第12条の16第2項は、市町村が管理する公共浄化槽についての届出です。この記事で扱うのは個人が管理する浄化槽ですが、実家が公共浄化槽につながっている場合は、使用の開始や排水設備の廃止を市町村に届け出ます。

受検命令に違反すると30万円以下の過料

法定検査を受けていないと、すぐに罰則がかかるわけではありません。第66条の2は「第七条の二第三項又は第十二条の二第三項の規定による命令に違反した者は、三十万円以下の過料に処する」と定めています。

第12条の2第3項は受検の命令です。指導や助言、勧告を経て命令が出され、その命令に違反してはじめて過料の対象になる、という順番になっています。

義務・期限・罰則を一覧で分ける

行為 義務か任意か 期限 罰則の規定
使用休止の届出を出す 任意 定めなし 出さないことへの規定なし(虚偽は5万円以下の過料)
使用再開の届出を出す(休止を届け出た浄化槽) 義務 30日以内 未提出・虚偽は5万円以下の過料
使用廃止の届出を出す 義務 30日以内 未提出・虚偽は5万円以下の過料
管理者変更の報告を出す 義務 30日以内 条文上の規定なし
法定検査を受ける 義務 毎年 受検命令に違反すると30万円以下の過料

罰則が無いことと、やらなくてよいことは別です。期限が法律に書かれている以上、出すのが前提になります。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法

浄化槽を使わないまま放置するとどうなる?

届出を出さずに放置しても、義務が消えるわけではありません。保守点検・清掃・法定検査は続き、法定検査については勧告を経て受検命令が出ることがあります。まず記録や設置の届出で、合併処理か単独処理かを確かめてください。単独処理で、生活環境や公衆衛生に重大な支障が出るおそれがあると認められたものは、別の措置の対象です。都道府県知事の助言または指導、勧告、命令があり、命令に違反すると30万円以下の罰金になります。臭いや排水の異常がすでに出ているなら、制度の確認より先に連絡してください。連絡先は後ろで挙げます。届出の要否と期限も、そのときに確かめてください。

合併処理か単独処理かを先に確かめる

し尿と生活雑排水をあわせて処理するのが合併処理浄化槽、し尿だけを処理するのが単独処理浄化槽です。環境省は「平成12年の浄化槽法改正により単独処理浄化槽は新設が原則禁止されたものの、依然としてその多くが残存している」と書いています。

令和6年度末の設置基数は全体で7,433,857基、そのうち単独処理浄化槽が3,290,611基です。築年数の古い実家では、こちらである可能性があります。保守点検や法定検査の記録、設置の届出で確かめられます。

漏水が確認された件数の66%が単独処理

環境省の令和6年度の集計では、11条検査の結果で「漏水が確認された件数の66%が単独処理浄化槽であり、依然として高い発生率となっている」とされています。

この66%は、設置基数に占める割合ではなく、漏水が確認された件数の内訳です。数字の読み方を取り違えないでください。

特定既存単独処理浄化槽と判断された場合の措置

単独処理浄化槽がすべて対象になるわけではありません。そのまま放置すれば生活環境の保全及び公衆衛生上重大な支障が生ずるおそれのある状態にあると認められるものが、特定既存単独処理浄化槽として扱われます。

浄化槽法附則第11条は、都道府県知事が助言または指導、勧告、命令をすることができると定め、命令に違反した者は30万円以下の罰金に処するとしています。前に出てきた法定検査の受検命令違反は過料でしたが、こちらは罰金です。どちらも命令に違反してはじめて対象になる、という順番は同じです。

環境省の指針は、この措置について「合併処理浄化槽への転換を原則とした指導を行うこととする」と書いています。空き家であること自体が発動の要件ではありません。

臭いが出ているときの連絡先

連絡先は2つです。保守点検や清掃を委託している業者と、自治体の浄化槽の担当窓口です。

近隣から苦情が来ている場合も同じです。連絡するときは、合併処理か単独処理か、最後に清掃と点検を受けたのはいつかを手元に置いておくと話が早くなります。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法/環境省:令和6年度における浄化槽の設置状況等について/特定既存単独処理浄化槽に対する措置に関する指針

動く前に確かめる4つのこと

手を動かす前に、記録で設備の中身を押さえ、窓口と提出方法を確かめ、保守点検の契約をどうするか決め、誰が管理者になるかを決めておくと、遠方からの往復が減ります。届出で義務が外れても業者への支払いが止まるとは限らないので、両方を手当てしてください。窓口と契約の確認は、電話とインターネットで進められます。記録が手元にないときは、業者に控えが残っていないかを聞いてください。そのうえで1回だけ行く段取りが組めると、交通費と休みの負担がかなり変わってきます。とくに清掃の立会いが要るかどうかは、早めに聞いておきたいところです。

動く前に確かめる4つのことを並べた図

記録で分かること

実家に残っている書類から、次のことが読み取れます。

  • 保守点検の記録:直近の点検日と、指摘されていた不具合
  • 清掃の記録:直近の清掃日と作業の内容(休止届に添えるのは、休止に当たって行った清掃の記録)
  • 法定検査の結果書:判定と、指定検査機関の名前
  • 設置の届出:設置の時期と、合併処理か単独処理か

見つからないときは、委託していた業者に問い合わせてください。施行規則第5条第9項は、委託を受けた業者にも保守点検・清掃の記録の写しを3年間保存することを義務づけています。管理者側の保存義務は同条第8項で、こちらも3年間です。

窓口と提出方法を確かめる

様式は施行規則で、休止が様式第一号、再開が様式第一号の二、廃止が様式第一号の三と定められています。一方で、提出先・独自の様式・郵送や電子申請の可否・代理提出の可否・立会いの要否は自治体で違います。

提出先の実例を挙げると、富山県は厚生センターと支所、富山市は市保健所、高岡市は市役所です。大分県は、県が指定した市町村は管轄の保健所・保健部が提出先で、それ以外は市町村の浄化槽担当窓口に相談する扱いです。電子申請も用意されています。

実家のある自治体のページで「浄化槽 使用休止届」などを探すと、様式と記入例が置かれていることが多いので、電話の前に目を通しておくと話が早くなります。

役所の場所や連絡先が分からないときは、当サイトの地域から探す(市町村別の不用品・粗大ごみの出し方)を使ってください。47都道府県・1,741市区町村について、粗大ごみの申し込み先と役所の所在地をまとめています。浄化槽の担当課は自治体によって名前が違うので、代表番号から聞くのが確実です。

保守点検の契約は別に終わらせる

届出を出せば請求も止まる、とは限りません。法律上の義務が外れることと、業者との委託契約が終わることは別です。

契約の解約になるのか、休止の扱いになるのか、いつまでに言えばよいのかは、委託している業者に確認してください。

電話が1回で済むように、聞くことをまとめておきます。

  • 休止の清掃の費用と、張り水(清掃のあとに槽へ張る水)の給水をどちらが用意するか
  • 清掃の作業に立会いが要るか、鍵の受け渡しだけで済むか
  • 使用を再開するときの保守点検の費用
  • 委託契約を休止の扱いにできるか、解約になるか、いつまでに伝えればよいか

誰が管理者になるかを決める

報告書に書くのは、新しい管理者の氏名と住所、設置場所、変更前の管理者の氏名、変更年月日です(施行規則第8条の2第3項)。相続なら、変更前の欄に親の氏名が入ります。誰がなるかを先に決めないと、この欄が埋まりません。

きょうだいで決めるときは遺品整理の費用は誰が払う?きょうだいで揉めない決め方の考え方が使えます。きょうだいがいない場合の進め方は一人っ子の実家じまいは何が違う?進め方と備えで扱っています。

(出典)e-Gov法令検索:環境省関係浄化槽法施行規則/富山県:浄化槽の管理者変更・使用廃止の手続きについて/大分県:浄化槽使用休止の手続きについて

休止の前の清掃は、通常の清掃と条件が違う

庭の水栓とホース、奥の芝生にある浄化槽の蓋

施行規則第3条は、使用の休止に当たって行う清掃を通常の清掃と分けて書いています。汚泥・スカム・中間水等の引き出しは全量、休止の清掃では洗浄に使った水を張り水に再利用できず、張り水には水道水等を使います。通常の清掃とは作業の条件が違うので、作業の範囲・給水の方法・料金を見積もりで確かめてください。同じ「清掃」という言葉でも中身が違うため、電話で頼むときは休止のための清掃だと伝える必要があります。伝えないまま通常の清掃で終わると、記録が休止の届出に使えないことがあります。

汚泥・スカム・中間水は全量引き出し

第3条第6号は、休止のときだけ別の扱いを置いています。条文は「使用の休止に当たつて清掃をする場合には、汚泥、スカム、中間水等の引き出しは全量とすること」です。

スカムは水面に浮かんでくる固まり、中間水はその下にたまっている水のことです。通常の清掃では、方式によって引き出す範囲が分かれます。休止のときは、そこが全量に切り替わるという書き方です。

休止清掃では洗浄水を張り水に再利用できない

第3条第11号は「槽内の洗浄に使用した水は、引き出すこと」と定めています。そのただし書きが「使用の休止に当たつて清掃をする場合を除き、…張り水として使用することができる」です。

休止の清掃では、この再利用ができません。通常の清掃なら無条件で再利用できる、という意味ではなく、通常時も再利用してよい部分と用途は限られています。

張り水は水道水等を使う

空にして終わり、ではありません。第3条第13号は「使用の休止に当たつて清掃をする場合には、…張り水には、水道水等を使用すること」と定めています。

水を張るところまでが作業に含まれます。消毒剤の扱いも作業の一部なので、何をどこまで業者がやるのかを見積もりの段階で確かめておいてください。

(出典)e-Gov法令検索:環境省関係浄化槽法施行規則

空き家のブレーカーを落とす前に確認すること

住宅の基礎脇にコンクリートブロックを置いて据えた浄化槽のブロワ

落とす前に確かめるのは、休止の清掃に使う水の手当てと、ブロワの電源をどうするかの2つです。清掃には水を使うので、給水を業者に確かめてから水道を止める日を決めてください。ブロワは普段は電源を切らないのが原則です。長時間使わないときの扱いを案内している自治体もありますが、対象が自家用の小型合併処理浄化槽に限られることがあります。設備と状況で変わるので、家全体のブレーカーを落とす話と一緒にしないほうが安全です。また住むときは、保守点検をしてから動かし、再開の届出を30日以内に出します。

清掃・届出・停止の順番

法律が定めた手順ではありませんが、手戻りを減らすなら次の順番になります。

  1. 記録をそろえ、自治体の窓口と様式を確かめる
  2. 清掃業者に休止の清掃を依頼し、給水をどうするかもあわせて確かめる
  3. 清掃の記録を受け取り、休止の届出を出す
  4. 水道と電気をいつ止めるかを決める

水道を先に止めてしまうと、張り水の手当てを別に考えることになります。

ブロワの電源は設備と状況で決まる

使っているあいだは、電源を切らないのが原則です。浄化槽法第3条第3項の使用に関する準則を定めた施行規則第1条第5号が、「電気設備を有する浄化槽にあつては、電源を切らないこと」としています。つくばみらい市も「非常のときを除き、電源は切らないで下さい。電源を切るとブロワから空気が送られるかくはん(散気)装置が働かなくなります。そのために槽内の微生物が死んだり、働きが悪くなります」と説明しています。

そのうえで、長時間使わないときは「電源を切り、清掃して水を張っておく」と案内しています。これは自家用の小型合併処理浄化槽についての案内なので、単独処理浄化槽を含めて一律に当てはめないでください。自分の設備でどうするかは、委託している業者に確かめるのが確実です。

使用を再開するときは保守点検から

また住むことになったら、再開の届出が必要です。第11条の2第2項の対象は使用の休止を届け出た浄化槽で、こちらは義務でした。

起算点は2つあります。条文は「当該浄化槽の使用を再開した日又は当該浄化槽の使用が再開されていることを知つた日から三十日以内」としています。自分で再開した場合だけでなく、誰かが使い始めていると知った場合も、そこから30日です。

つくばみらい市も「使用再開にあたっては保守点検を行って下さい」と案内しています。水を張ったまま止めていた設備を、点検してから動かす順番になります。

施行規則第6条第4項は、再開の届出に当たって保守点検が行われたときは、これを法第10条第1項に基づく保守点検とみなすとしています。再開のための点検が、そのまま通常の保守点検に数えられるということです。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法/環境省関係浄化槽法施行規則/つくばみらい市:浄化槽Q&A(電源を切るか切らないか)

空き家の浄化槽のよくある質問

たまにでも使うなら管理は続き、当面使わないなら清掃を済ませて休止を届け出る。質問の多くは、この2つのどちらに当たるかで答えが決まります。休止の期間に上限も下限も法令の定めはありませんが、自治体が示す目安はあります。届出で3つの義務が外れても、休止の清掃と再開時の保守点検には費用がかかり、業者との契約は別に手当てが要ります。売却で管理者が変わったら新しい管理者が30日以内に報告し、下水道につないだら廃止の日から30日以内に廃止の届出です。残った疑問は、自治体の窓口に聞くときの質問にしてください。

親の名前で法定検査の案内が届いたらどうしますか

休止の届出を出していない浄化槽なら、受検の義務は続いています。案内の名義は管理者変更の報告で新しい管理者に変わり、受検そのものは案内元の指定検査機関に連絡して日程を決めます。

当面使わないと決まっているなら、休止の清掃と届出を先に済ませれば、以降の受検義務は外れます。受けていないだけですぐに過料になるわけではありませんが、勧告を経た受検命令に違反すると30万円以下の過料です。

たまにしか使わない場合はどうなりますか

使うなら使用中で、保守点検・清掃・法定検査は続きます。休止の届出は排水を流さないことが前提です。片付けなどで通い、トイレなどから排水を流しているあいだは選べません。

使い終わってから休止の清掃を頼み、切り替える順番になります。

休止に期間の上限はありますか

浄化槽法にも施行規則にも、休止の期間についての定めはありません。上限も下限も条文には書かれていないということです。

一方で「概ね1年以上」といった目安を案内している自治体があるので、実家のある自治体の運用を確かめてください。

休止届を出せば費用は一切かかりませんか

保守点検・清掃・法定検査の3つの義務は外れますが、その前に行う休止の清掃そのものに費用がかかります。再開するときの保守点検も別に必要です。

業者との委託契約をどうするかも、届出とは別に手当てが要ります。

売るときに浄化槽はどう扱われますか

管理者変更の報告は、新しい管理者が変更の日から30日以内に出します。引き継ぐ記録は前に挙げたとおりです。

売買の条件としてどう扱うかは、売主と買主の取り決めになります。

下水道につないだら浄化槽はどうしますか

使用を廃止したことになるので、30日以内に使用廃止の届出を出します。撤去するか埋め戻すかは届出とは別の話ですが、埋め戻しを例外の扱いにしている自治体があるので、市区町村に確かめてから決めます。

(出典)e-Gov法令検索:浄化槽法/環境省関係浄化槽法施行規則

まとめ|当面の使い方と記録から決める

当面の使い方と手元の記録から決めます。空き家でも使うなら管理は続き、当面使わないなら使用休止の届出、二度と使わないなら使用廃止の届出です。管理者が変わっていれば、その報告は選んだ道と関係なく別に要ります。手元にそろえるのは保守点検・清掃・法定検査の記録と設置の届出で、自治体には様式と提出方法を、清掃業者には休止の清掃と給水の方法を確かめます。休止は清掃を済ませてから届け出るので、水を使う段取りが先に来ます。罰則に引っぱられて焦る必要はありませんが、法律に書かれた期限は動かせません。

最初にやる4つのこと

  • 当面、実家で水を流す使い方をするかを決める(たまに使う/当面使わない/二度と使わない)
  • 保守点検・清掃・法定検査の記録と、設置の届出をそろえる
  • 使い続けるなら業者に契約と点検の予定を、届出を出すなら自治体に様式と提出方法を確かめる
  • 休止するなら清掃業者に休止の清掃と給水の方法を、廃止するなら工事の担当者に廃止の日を確かめる

進め方で迷ったときはお問い合わせからご相談ください。個別の設備の判断はお答えできませんが、確認する順番の整理はお手伝いできます。

※様式・提出先・「使用の休止」とみなす期間の運用は、市区町村や都道府県によって異なります。掲載した数値は公表資料からの引用で、個別の判断に代わるものではありません。当サイトは手続きの代行や工事の請負をしておらず、最終的な確認は自治体の担当窓口と、委託している業者へお願いします。

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